8回目07
この世界に来てから二年が経過した。
史香が言ったとおり一ヶ月後に旅立っていった。
あずさ、史香、サヤ、ターナの四人で。
俺も見送りにいきたかったが。
「すみません。あずささんが怖がるので」
「無理。あずにゃんが怯える」
「サーヤは大歓迎なんだけどー。あーたんが駄目って言うから。ごめんねーブータン。サーヤのためにお金は貯めといてねー。絶対だよー」
他の三人に断られ、あずさからは史香経由で手紙を貰った。
『直接言いたかったのですが、まだ無理そうなので、大変恐縮なのですが、手紙で気持ちを伝えさせていただきます。ブータンさんには、家の事を始め数々のフォローをしていただきありがとうございます。私達は王都に行きたいと思います。また帰ってきますので、その時は直接お話しできたら幸いです』
うん。手紙を貰ったのは大変嬉しい。くるくる回って小躍りするほど嬉しい。
だが、心の距離が遠すぎる。行く目的も知っている。しかし手紙には少しも書かれていない。典型的な社交辞令的手紙だ。
手紙を持ってきたときの史香の表情は変わってなかったが、どことなく面白い事が起きるぞ的雰囲気で、後から見ると行ったが、ここで見ろと強要され、見終わった後は、満足そうに帰って行った。
絶対手紙の内容知っていたな畜生。相変わらずのドSぶりだ。
週に三回ほど本家事サヤの家に掃除に行っている。
長く空けた家は、痛みやすいので、サーヤ達に頼まれた。
べっ別にサヤ達の部屋に入って、○態仮面ごっこしたり、むふふな事が目的じゃないぞ。そんな事してそうな顔しているけど。
第一、そういう物は置いてなく綺麗に片づけられ、入居者募集中のアパートみたいだった。
サーヤの部屋には何かあると思ったが、残念・・・・・・って違うから、がっかりしてないから、ターナや史香の部屋を見て少しも落ち込んでないから。史香の部屋のタンスを開けたら『残念、変態豚野郎』と、あっかんべーのイラストと共に書かれていたり、そもそもあずさの部屋には魔法で鍵がかけてあり、どんだけ信用ないんだと、落ち込んだが。
帰ってくるのは当分先だと思う。それまでに家というか村を魔改造しようと、密かに親方達と計画中だ。
目標は○ィズニーランドか○SJか、夢と希望のテーマパークだ。
そうそう、ようやく宿屋や村全域にトイレと排水が行き渡った。
親方と俺、無茶苦茶頑張った。
そのおかげもあって、村長からサーヤの裏にある東京ドーム十個分の広大な雑木林を開拓する許可をもらった。
サマンサの森とは反対側で、サーヤの家を立て替える段階で、雑木林の外側に堅牢な壁を設置し、モンスターがいない事は確認済みだ。
主なイベントは以上だ。名探偵○ナン張りに毎日事件があるわけでもなく、○レオンしんちゃんや○安鉄筋家族みたいに毎日面白いイベントなどない。
恋愛系イベント? あるはずないだろそんなもの。村の女性達には頼られるようにはなったが、おば・・・・・・お姉さんやおばあちゃんばっかりで、年頃の若い人には避けられる。恋愛のれの字も起きていない。
恋シュミでは完全攻略なんて朝飯前だが、現実世界はひどく厳しい。
さて行くとするか。
俺はどきどきしながら英雄ギルドに向かう。
何故かって? それは俺やあずさが来た日。つまり地球から人が召還される日だ。
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