8回目04

「要約すると、貴男は七回死んでいる。世界が分岐していて、毎回私達がいる。難易度は望んだ事柄によって変わり、今回は一番簡単な世界。そして私に一回殺されている」




 俺は高速で首を振る。ようやくダガーは下げられた。




 全部げろってしまった。隅から隅まで。俺が史香に殺し殺されたことも含めて。




 それを言っても、史香は平然としていて、『そうね、もしあずさが死んでいたら貴男を殺していた』と無表情で答えた。




「真理ちゃんがいれば本当かどうか分かるけど、私じゃ判断できない。それぐらい俄には信じられないけど、辻褄は合う」




 史香は眉間に皺を寄せ考え込んでいた。




 そりゃ信じられないよなと俺でも思う。出来の悪い三流小説だ。




 主人公はブータンと呼ばれ、ヒロインは今のところいない。なおかつ終わりのおの字も見えない。


『俺達の冒険はこれからだ』で打ち切りエンディングになること間違いなしだ。






 結局長考の末、史香は信じる方向で纏まったようだ。




「それでこの世界の情報は、引きこもっていてこれからの展開は四年後、核となる『二階堂』が来ることと、十年後最終決戦があること位、ほんとに使えない」




 ぐさぐさぐさっ!! 数十本もの幻視の槍が突き刺さった。俺のマインドは底をついた。




 だってしかたないじゃん、漫画や小説のチート主人公を尊敬するよ。




 だって一発クリアだよ。リアルじゃ無理無理。○リオメーカの成功率0・02%を一回でクリアするようなものだ。




 何回リセットできるか分からないが、今回でクリアできる確率は限りなく低い。




 ようやくイージーモード第一ステージをクリアしたっぽいたちいちなのに、最終決戦で勝利できる自信はないし、エンディング?の条件も分からない。




 果たして全部の世界を救わないと駄目なのか、一つの世界でもいいのか。




 リセットがいくつあっても足りない。




 いかんいかん滅茶苦茶ダウナーになる。




「ひょっとして、今回はクリアしなくていいやぐらいに思っている」




 史香がダガーを投げ、すっと、おれの首の皮一枚を斬る。




 つぅーと血が流れる。




 斬られるまで気が付かなかった。




 史香の両手を見るとダガーが二本握られていた。




 下手な事を考えたら次は当てると言わんばかりに。




 怖っ。




 今時の女子高生はかなりぶっ飛んでいる。




 俺は首がもげるんじゃないかと思うほど高速で首を横に振る。




「厳しいのは事実、これは早急に四人で集まらないと。でもブーの話だと四人だけじゃ難易度の高い世界ではクリアできなかった。しかし難易度を落としたこの世界ではクリアできる? 情報が足りない。やっぱり真理ちゃんを早急に捜さないと。その間ブーが死んだら水の泡になる。保険は必要。パーティーに同行させるのは論外。あずさちゃんは嫌がるし、私も嫌。ならどうする」




 目の前で史香は黒いオーラをまき散らしながら、ぶつぶつ言っている。




 ヤンデレ系ヒロインは好きだがヤンデス系ノットヒロインなど誰が欲しがるか。




 というか、刺され損。ぶつぶつ内容に俺が考えたことも入っているのだが。




 そこを突っ込んだら今度こそ殺られるのでお口チャックウイルソン。




 というか撫でたい。目の前にある史香の頭を撫で撫でしたい。今座っている位置はナデポのベスポジだ。




 イケヤサ(イケメンで優しい)主人公なら迷わず撫でる場面だが、俺がやったら腕が無くなる確率が高い。




 俺のお馬鹿な葛藤は史香が考えが纏まったと同時に終了した。




「とりあえず今後のブーの方針を発表する」




 やっぱり呼び名ブーで決定なのね。貴男呼びより




 親近感があるから一歩前進だ。そして俺に拒否権はない。まぁいいんだけどね。




 話し合いという名の、イエスかハイしかいえない第一回攻略会議は明け方近くまで続いた。




 朝日が目に染みるぜ。




 充血とストレスで雲がオレンジに見えるがどうにか乗り切った。




 そのまま電池が切れたように俺の意識が暗転した。




 次起きたら森の中ってないよな・・・・・・なんて思いながら。




 フラグやふりじゃないぞ。

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