8回目03

 


「なっ、なにかお困りなんだな」




 言えた、あずさに初めて躊躇せずに自分から声をかけられた。苦節8回、どんなけぇ~かもしれないが、あずさから見て俺は初対面の太った男。なかなか踏み出せなかった。




「えっと、はい。ここは何処なのでしょうか」




 滅茶苦茶警戒されてる。




「あっ怪しいものじゃないんだな。おっおらも一年前ここに来たんだべよ。いっ良いところ知ってるからついてくるだべ」




 言ってから気づく。




 これってまんま○ャッチじゃねーか。何言ってんだ俺。




 ほらみろあずさの顔が氷点下まで低下している。




「あれ~、こんなとこで何してるのブータン」




 神がきた。




 神様仏様サヤ様だ。




「サ~ヤ~、良いとこに来ただ」




 俺はサヤに事情を話して泣きつく。




 文字通り○び太が○ラエモンに泣きつくが如く、




 大の大人が恥ずかしいとか、○女に泣きつくのはご褒美だとか、色々意見はあると思う。




 だ~がしかし。切羽詰まった俺には関係ねぇ。




「も~仕方ないなーブータンは。サーヤがいないと何にもできないんだから~。そのかわり報酬は七割貰うからね~」




 子供の様によしよしされる。




 癒される。報酬なんてどうでも良くなってきた。




 汚物を見るような視線を感じるが、それはもう今更だ。




 サヤが話して、あずさの誤解が解けて、ようやくり英雄ギルドに向かう事ができた。




 あずさからサーヤ経由で半径三メートル以内接近禁止令がでたが。




 それからは前と同じだ。コルネが説明してあずさが質問する。ステータスは見えなかったが、おそらく同じだと思う。




 何とか、離れで住むことの許可を貰った。




 最初はあずさが大反対していたが、サヤが上手いこと宥め、俺が『宿屋は嫌だぁ~。どうかおらを助けてほしいんだな』と恥も外聞もなく泣きつき、実際に宿屋をみたり、俺が作ったということもあり、最終的にはあずさも頷いた。






 離れの家で一息つく。サヤ達はあずさの歓迎会だとかで食堂にいる。




 これでようやく第一段階突破だ。




 どうにかこうにか上手く言った。サヤに報酬の九割もってかれたが問題ない。




 後は、史香を待つだけだ。




 ブラッディベアーも居ないことだし問題ないはずだ。




 それからは未知の領域だ。




 なんせ一回目史香が来てからひきこもっていたから、それ以降は何の情報もない。




 三年目に誰がくるのか、何かイベントはあるのか等々。




 段々眠くなってきた。




 目を見開くことなく。俺は夢の世界へと消えていった。












 うん?




 誰もいないはずの自室に、誰かにおこされ、目を開ける。




 今現在の状況。




 クール系美女が馬乗りになっている。




 やってもらいシチュエーションベスト5に入る。




「隠していることを話せ。さもなくば拷問する」




 手足が拘束され、ダガーを首元に押し当てられていなければ。




 夢だよな。さっきの流れからこれ絶対夢だ。




 頭の中で頬を抓っても、針千本飲ましても覚めない。




 残念これは現実世界だ。




 あれから、二週間ほど経過して史香がこの村にやってきた。




 当初の予定よりも大分早い。やはりトリガーはブラッディーベアーだと推測する。




 それは当たっていて、倒した後、合同パーティーは解散し、滞在していたソロ女冒険者と共にきていた


一緒にきたのはターナ。二回目の時に俺と会っていたソロ冒険者だ。




 懐かしい・・・・・・じゃなくて次だ。




 史香とあずさは両方とも涙を流して抱きしめあい、感動の再会を果たした。




 俺も思わずもらい泣きしてほっこりした。




 ここまで来るのに八回もかかったが、やって良かったと。




 それから五人で歓迎会を開いた。もちろんあずさと史香とサヤとコルナとターナの五人だ。




 俺は呼ばれもしたかったさ、ふっ。




 そして、深夜こうした事態になった。




「おっおらがなんかしただか」




 全く見に覚えがない。




 あずさには快適な環境を提供し、今回は成功したのでこうなる理由も思い浮かばない。




 今思い浮かぶのは、二回目も侵入されてやられたんだろうなと。直接攻撃はペナルティになるが関節攻撃は対象外だ。きっと木炭でも燃やしたのだろう。




 問答無用でやられないだけましだった。




「最初からおかしかった。ターナと私と会った時の反応。私やターナは貴男と会った事はない。なのに貴男は私達を知っているようだった。だから歓迎会でいろいろ聞いたけど、貴男の行動はおかしい。ここ一年、聞いた話では最短でかつ最速、真里のようなタイプには見えない。まるで未来を知っているよう」




 すっ鋭すぎる。真里って確か、あずさや史香の友達だったような。




「ほらやっぱり、『真里』の事も知っていた。誰も言ってないのに『どうして』知っている」




 しまったぁ~~。後悔しても遅い。単純な俺は、史香の誘導尋問に引っかかってしまった。




 もう、下手な言い訳は使えない。




 早く喋れと、ダガーをぽんぽんと当てている。




「いっぺん死んでみる」




『もう七回も死んでるよ』と突っ込みたかったが、本当に殺されそうなのでやめた。








 アニメだと言われたい言葉だったが、リアルだと怖すぎだ。








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