4回目02~コルナ視点01~
私の名前はコルナ。しがない村の英雄ギルドに働く受付。
半年前のことは覚えている。
その日も、誰も来ない受付で、苦手な書類仕事に悪戦苦闘していた。
「あ~もう、ちっとも減らない」
頭をがしがしとかき、声にならない悲鳴を上げる。
「あのぉ~、ここが英雄ギルドで合ってるだが」
そんな時、あいつ、ブータンがやってきた。
第一印象は、ひどい話だが、オークが人間に変身したらこうなる的な感じだ。
顔はまんまる、腹はでかく短足で、見るからに贅肉だらけの中年のおじさん。
とても戦闘できる体型と年ではなかった。
一年に一回、異異世界からくる人達の中で、若い子達は活躍する割合が高いが、三十をすぎるとぐんと減る。
体型別では、太っている人物で活躍している人は少ない。
つまり太っていて三十を過ぎた男で活躍する人物は滅多にいない。
気の毒だが仕方がない。だけどそういう人のために英雄ギルドがある。
顔を見ると不安そうに・・・・・・あれっ。
中年男はやけに馴れているような感じだった。
初めてなのにおかしな感じだ。
そう思いながらも、説明する。
頭がいいのか、妙に物分かりがよく、男は一回で理解し質問もない。
そして、英雄ギルドに就職した。
何かがおかしい。名前がブータンと言うことからすでにおかしいけど。
そう感じたのは、一週間後だったか二週間後だったか。
書類仕事が異様に速い。
簿記作業は分かる。異世界の人達の中で速い人達がいることは知っている。楽になったと私も喜んでいた。
驚いたのは、村人からの相談や本部や各地のギルドからくる、計画書、困り事、相談等々、まるで見てきたかの如くすらすら書く。
それはもう伝え聞く名探偵コ○ンの如く。
見た目はメタボ、頭脳は天才ね。
それだけじゃない、サヤの家をこの村一番の立派な家を建てた。
それはもうサヤの喜び様は言葉では言い表せないくらいだ。
正直羨ましい。
サヤに招待され、家に行ったが、なんていうか、もうね。
広いキッチン、広々とした居間、シャワーに風呂にサウナに水洗トイレ。
極めつけは、沈むベット。
何処の極楽浄土だ。
一度泊まった王都の高級ホテルより良い。
年甲斐もなく・・・・・・って失礼ね。まだ十代よ、ぎりぎりだけど。
まるで少女みたいにはしゃいだわよ。悪い?
なんやかんやで週に一度はお世話になっている。
そんなある日、やけに深刻そうな顔で、相談に乗って欲しいと言われた。
この前からブータンが悩んでいたのは知っていたので、何の相談か分からなかったが、二つ返事で了承した。
まぁ~、仕事でかなり助けてもらっているし、泊まらせてもらったりとお世話になっているし。
まっ、まぁ、告白とかなら、なっ、なるべく傷つかない断り方をしよう。
べっ別に嫌いではない。まぁーあ、優しいし、仕事はできるし、ちょっとなまっているけど、渋い声だし。
これでもう少し痩せてくれれば・・・・・・って、なに考えてんの私。
一人で百面相して茹で蛸の様に真っ赤になり顔を伏せてうずくまる。
その後、何とか持ち直した私は、サヤの家に向かう。
そして食事の後、ブータンがおもむろに話し始める。
サヤもいることから告白ではないと分かり少しほっとする。
そしてブータンの秘密がようやく分かった。
俄には信じられない。
この世界をループしている。そんなスキル聞いたこともない。
しかし、そう考えると辻褄が合う部分が多い。習ってもないのに鍛冶魔法、中級魔法が使え、サヤも驚くことにブータンに教えてもらったとか言って当たり前に魔法を披露した。
「サーヤ凄いでしょ。ブータンに口止めされてたけど、コルネお姉ちゃんに披露したかったんだよぉ~」
そう言って、サヤは胸を張りニパーと笑った。
張りつめていた空気が和やかになった。
最後まで聞いて、私が思ったことは唯一つ。
これはもう積んでいるわね。
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