4回目01

それから半年、俺はもう無心でサヤの家を作った。




 無我の境地で、サヤから『ブータン大丈夫、サーヤ心配だよ~』と言われたほどだ。






 そのかいあって、サヤの家は大幅にランクアップした。もはや最初の原型をとどめていなく、立派な二階建てだ。




 計画はあった。三回目の時の話だが、親方と話して、図面や構想はできあがっていた。




 来月改造しようと話し合ったのはバッドエンド一週間前の話だ。




 その構想を今の親方と話し合って、協力してもらった。




 親方からは立派な大工だと太鼓判を押してもらい、俺の元で働かないかと言われたが、断った。




 前回までだったら、それも良いかも、大工王に俺はなる、なんて思ってたかもしれないけど、今回は考えないといけないことが多すぎる。




 俺の頭では何度考えても答えを導けなかった。




 あずさを見殺しにすると、史香に殺され、あずさを村に留めると、ブラッディベアーが村を襲う。




 なんて無理ゲーだ。○イキングみたく叫びたくなる。




 次のストーリーに進める確実な方法はあずさを見殺しにして引きこもるなんて情けない話だ。




 レベルを上げればいいって、無理だ無理。なめるな、諦めろ、無理だ。




 例え千回繰り返しても、ブラッディベアーを倒せない。倒せるビジョンが思い浮かばない。




 それは、あるトラウマが原因だが、とにかくモンスターを倒すのは無理だ。




 すると同同巡りになる。




 俺も考えたさ、脳が沸騰するほど、脳みそがパンクするほど。




 運が悪いので○天堂のお菓子も食べれないし、チート主人公は五年後だし。




 しまいには、悪魔の囁きが聞こえてきた。




「もう楽になってしまえよ。おまえは十分頑張った。あずさは死ぬ運命だったのさ。史香は煽れば勝手に自滅する。そしたらお前は次にいけるんだ」




 そして天使の囁きが対抗する。




「そんな事はいけません。あずささんや史香さんは助けなければいけません。そんな事をすれば貴男の心は悪に堕ち、スキルも消えるかもしれません」




 今のところ天使が優勢だが、日が経つにつれ悪魔に傾きかけている。




 自分だけじゃ解決方法は思いつかない。




 だから俺は。














「話ってなに? 前からやけに時折深刻な顔してたけど、なんかあった」




「サーヤ前から心配してたんだよ~。ブータン、やっと話してくれるね~」




 大事な話があると言って、サヤとコルネに集まってもらった。




 当然リスクもある。とある有名なラノベでも、話したらペナルティが発生し、結果的にその回は死に至った。




 それがなくても、言ってしまえば、コルネが上に話し拘束される可能性もある。




 そんな事しない人物だと思っているが、可能性はなくはない。




 ギルドのルールだとか、上から言われていてとか。




 その他もろもろを含めて、俺は話すことにしたのだ。




「実はおっおらの固有スキルは、ループだ。おら何回もこの世界を繰り返しているだ」




 言った。言ってしまった。




 顔は伏せている。反応が怖いからだ。




 とりあえず体は何ともない。言ってしまったら死亡説は回避された形だ。




 おそるおそる顔を上げる。サヤはついていけないのかぽかんとしていて、コルネは深刻そうな顔をしていた。




「ブータンがこんな事で嘘を言うはずがないし、でもこんな事ってありえるの。異世界人の固有スキルは知っているけど、こんな事って」




 コルネはなにやらぶつぶつと独り言を始め、俺は黙って成り行きを見守る。




 やがて考えが纏まったのか、コルナは俺を見つめる。




「まずは、話してくれてありがとう。でもどうして話してくれる気になったの。言ってしまえばブータンの固有スキルは聞いたこともないぐらいのレアなものよ。本部に連行されてもおかしくないぐらいの。他の人に話しちゃ絶対駄目よ」




 やっぱりと俺は思った。他にいない唯一無二なスキル。他の人にとっては眉唾物だろう。きっと本部に連行されて実験動物にされる。




 話してよかった。本当にそう思う。コルナは心配して忠告してくれた




 そして俺は話し始めた。俺が三回繰り返した経験。




 半年後にあずさが来ること。ブラッディベアー事件。史香来襲。チート主人公二階堂。そして最終決戦。




 言葉に詰まりながら、たどたどしい説明だったが、コルナは質問が何回かあったが後は黙って聞いていた。




 時間は小一時間程度。全てを話し終え、コルナの反応は。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る