2回目08

「そっそれじゃあ、どっどうすればいいんだな」




「うーんそれが問題なのよね、あっちからこっちにきてくれれば一番いいんだけど、様子を聞いた限りでは、こちらに来るのに一月程度かかるって聞いてるし、ギルドに強制依頼として女性パーティーをこさせる事もできるけど、この村の心証も悪くなるし、なんだかんだで引き延ばされると思うから二~三ヶ月必要ね。そうなるとあずさが爆発して、無謀な事するでしょ」




 うんうんと俺は頷く。前回もコルナは引き留めたはずだ。なのに後一週間ぐらいで我慢できずにあずさはいってしまう。




 ケ○君や圭○君だと、あ○きちゃんや惨劇を止めてくれるのに、俺じゃあ金を出すだけで役立たずだ。




「現状誰も名乗り出てくれない。取れる手段は後一つね」




 びしっと一つ指を俺に向ける。




 固唾を飲んで俺はコルネを見る。




 今日のコルネは過去一で頼もしかった。惚れてまうやろ。




 今日帰ったらコルネを崇めよう。




 コルネがぶるっと震えた気がした。




「い~い、ギルドの中には誰しもがクランやパーティーを組んでいるわけではなく、ソロとして活躍している人もいるの。中級ぐらいでほとんどの人が頭打ちになるけど、レベル的に森を抜けるぐらいなら大丈夫でしょ。実はあっちからオフォーがあって、金貨五枚でソロでもいいなら引き受けてくれる女性冒険者がいるの。ブータン払える」




 上限ぎりぎりの金額。背に腹は代えられない。この後九年間後味が悪くなるならやすいものだった。




「なっなんとか払えるんだな」




「それなら先方と連絡しとくわ。王都からだからくるのに五日かかるわね。全く男性恐怖症か何か知らないけど、ブータンに感謝の一つも言えないなんて、女性の風上にもおけないわよね」




 俺はどっちつかずの曖昧な笑いで、とりあえずデイリークエストを受けた後、業務に移った。




 これで一件落着だと俺は油断した。




 しかし俺は知らなかった。因果律の強さを、イベントの強制力を。




 先人達と同じように俺も失敗した。




 五日後、約束通りソロの女冒険者はきた。あずさの形見と亡骸の一部を持って。




 彼女はターナという名前で、エルフの美少女、ランクは、最強1から最弱10のうち、4とかなり高く、あの金額でも納得するような実力の持ち主だった。




「すまない」




 ターナはここにきてすぐにそう呟いた。聞けば、あずさがモンスターに襲われる瞬間を遠くで見ていたらしい。




 そしてようやく、一周目でわからなかった死因が判明した。




 俺が思っていたウルフではなかった。




 ブラッディベアー。熊型の魔物で黒い無数の刃物っぽいものが生えた体長三メートルぐらいのユニークモンスター。サマンサの森の主でランク三の冒険者が十五人いてようやく倒せるぐらいのレベルだ。ターナさんを責めることはできなかった。




 そして俺は知った。あずさがここをでた時点でバットエンド確定だったと。




 なんて、クソゲーだよ畜生、俺も引き留めなかったのは悪かったけどさ、あまぁーい考えだったのは自覚しているけどさ。




 いたたまれない気分になる。




「あなたの責任じゃありませんよ。あずささんが再三の忠告を聞かず、無断で行ってしまった。むしろ、ギルドとしては感謝しています。危険を冒してまで遺品を持ち帰ってくれたのですから」




 コルナは受付モードなので個人の感情はだしていないが俺には分かる。自分を責めているのだと。油断したのは俺も同じだというのに。手が白くなるほど拳を握りしめていた。




 言えば良かったと。コルナに何もかもぶちまければ良かったと言う感情もあるが、それはできなかった。




 何度も言うが、これはバッドエンド確定ルートだ。十年間何のイベントがあったのか確認するためのルートであり、言ってしまえば何かが崩れ、変に条件をクリアしてしまう可能性があるからだ。




 後九年、対策するのに充分な時間だ。




「タッ、ターナさんお願いがあるんだな」




 依頼のお金はいらないと拒否し遺品を渡しターナが帰ろうとしている所を俺は呼び止める。




 それは見殺しにしてしまった俺ができる唯一の償いだった。




 最初の依頼、金貨五枚はターナは受け取らえず、無料で引き受けると言ったが、どうにか金貨一枚受け取ってもらい、俺の依頼を快く受け入れてもらえた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る