2回目05
あれから早一年が経過した。
正直なめていたよ。なにがって、英雄ギルド受付の仕事量にだ。
今はギルドを利用するのが俺一人だったから、そんなに仕事量はないと思っていた。
そんな一年前の自分を殴りたくなってきた。
自分で自分を殴る。うん痛い。
まず、山のようにある書類整理。馬鹿じゃないのと思うぐらいに。漫画では見たことあるが、実際にあるとは。最初事務室に案内され、見たとき唖然とした。
フリーズだフリーズ。再起動に数分を要した。
ざっと数百枚ある。
「はっきり言って助かったわ、書類仕事って肩こるのよね。異世界人って計算早いんでしょ。分からないことがあったら聞いてちょうだい。受付は私が担当するから」
メタボなどもり男は受付じゃ戦力外と分かっているけど、イケメンでもなければ、コルナと俺じゃどっちが受付に相応しいかと言われれば、ほぼ100パーセントの確率で、誰だってコルナを選ぶのは分かっているけど。
一応受付を初め他のところも一通り学んだが、戦力外通知を受けた。ちなみにコルナの口調は、一週間ぐらいで、前回と似たような感じになった。
なにわともあれ、書類は多岐に渡る。
まず一番多いのは、簿記。本部に提出するために、備品の購入やクエスト処理、一日でどれだけ使い、収益はどれだけあったのか、事細かに書かなければならない。
一日一日、こつこつやればそれほど溜まる案件ではないのだが、ご覧のとおりだ。締め切りは一ヶ月と言われ、死ぬかと思った。
その2は、村人達の陳情書。俺は知らなかったが、村に英雄ギルドの建物を提供してくれる代わりに、地域貢献のいっかんとして、冒険者ギルドに行くほどではなくても、ちょっと困ったなっていうものを、コルナが無償で解決しているらしい。
例えば五十代女性、村人Aさんの悩み。
「雨の日家が雨漏りして困っている」
コルナはその家に行って雨漏りしている箇所を見つけ補強した。
十歳男性少年Aの場合。
「もっと、お菓子をいっぱい食べたい」
後日、その少年の為にコルナはお菓子を作りにいった。
二十代女性、年頃の女性Bさんの場合。
「気になる人がいるけど、話しかけられない」
後日、その女性と一緒に気になる男性の元に行き、二人の仲を取り持った。
要は何でも屋だ。ひきこもりで人見知りで緊張しいの俺には無理な話だが、案を考えてほしいとのことだ。
めんどくさいが、適材適所だ。仕方がない。
その三は本部から得た情報をまとめることだ。
英雄ギルドはこの国に何百とあり、他の国も合わせると千を越える。
各支部は本部に定期連絡をする必要があり、その時に本部から色々な情報をもらえる。
俺が最も欲しかったものだ。
一回目の時は、それはもう酷かった。食って寝て終わる。イベントのイの時もやってなく、言うなれば、最初の村の宿屋で生涯を過ごしているようなものだ。
実際今もそうだし、今回もそうなりそうな可能性は大だが、イベントを知っておいて損はない。十年後の事もそうだし、その前にも必ず何かがある。
俺の役割は、コルナが話している内容をひたすらメモしている。
俺に話し合いなんて、不可能を可能にする男でも不可能だ。
この世界は六つの国があり、森の国『フォレスト』、 砂漠の国『サンドラ』、機会の国『マシリカ』、火の国『ファイラ』、水の国『ウォタル』、闇の国『ダール』。ちなみにここはフォレストだ。闇の国は魔族が多く、魔王が統治しているが、周りのの国と争っているなんて事はなく。比較的温厚な国だ。しかし、ファイラとウォタル、マシリカとサンドラが現在戦争していて、フォレストとダールは中立だ。
英雄ギルドや冒険者ギルドは、中立というスタンスで、強制はできないようになっているが、戦争に参加するのは個人の自由になっている。
現在の状況はファイラとマシリカが優勢でサンドラとウォタルが劣勢だが、俺と同期の異世界人の活躍により盛り返しているらしい。
異世界人はんぱねぇ~と他人事のように思っている。自慢じゃないが俺が戦争に参加したら数分でやられる自信がある。
一年間で得た情報で他にめぼしいものがなく、最終決戦がなんなのか、予兆すら未だに分からない。
まぁこれからいやでも分かることだが。
給料は良い。月に金貨二枚、四人家族で一月銀貨五十枚もあれば暮らせる事から、かなりの高給取りで、俺の場合デイリークエストもあわせると、かなりのお金が貯まる。
一回目では考えられなかったが、何だが虚しい。お金の代わりに大切なものを失ったからだ。
そのお金を使い、あるか分からない三回目のために、色々やっている。
月一回くる行商の人に魔法の本をメインに、なにかためになる本を毎回注文している。
今ある本は。
○初級魔法講座
○世界の生い立ち
○料理入門編
○初めての大工作業
○初代英雄の冒険1
の五つだ。魔法の本は高く、初級で金貨一枚、中級になると金貨10枚はかかる。今お金を貯めて買う予定だ。
初級では、魔法とわから始まり、魔力の感じ方、魔力の出し方、生活魔法と、火水土風光闇の六大属性の発現方法と初級魔法がいくつか書かれている。
ラノベよりも薄い本だ。別にあれな本じゃないからな。
結果、俺は土以外使えなかった。普通主人公なら全属性がデフォだろといいたいが仕方ない。
どうせ俺はブータン主人公だよ。
中級では六大属性以外の魔法も書かれているのでそっちに期待したい。
世界の生い立ちは、秦の始皇帝から始まり・・・・・・面白くないから早く言えって、そうかそうか。
いわゆるアダムとイブのような感じで、世界の誕生から始まり、昔は三〇もの国があったが、戦争や自滅、災害に病気等から、今の六国に落ち着いた事を大きな出来事を中心に書かれている。ごくごくありふれた史実書らしい。王都の図書館に行けばもっと詳しく書かれたものもあると聞いたが、俺にはこれで十分だった。ちなみにこの本の価格は銀貨三十枚と結構するが、かなり分厚い本だった。
料理書と大工の本は参考書みたいなものだ。まぁまぁ参考になり、日用大工と簡単な料理ならできるようになった。
これ以上は実際に弟子入りした方が早いと薦められた。入門参考書は銀貨三枚と本の中では比較的やすい部類で、とりあえず他の部門の参考書を頼んだ。
最後の英雄の本は子供向けのラノベみたいなものだ。シリーズ物で子供時代に一回は読んだことがあるほど人気がある。史実よりもかなり脚色されているらしいが、かかれている出来事については本物らしく2巻を注文した。
だいたいはそんな感じだ。村の人には前回よりかは嫌悪感をもたれていない。
挨拶を交わす程度には進化したが、話しかけられることはなく、宿屋の主人とは少し話せるようにうなった。これでもだいぶ進歩したと自画自賛する。俺ってば偉い。やっ、調子にのっちゃってぇ~。
相変わらず、村の外にはでていない。村の外には危険がいっぱいだ。俺を村の外に早いのは十年早いんだよぉ。
三回目こそは村から出よう。とりあえずそのことは隅に追いやり時計を見る。
そろそろ時間だった。
次の異世界人がくるタイミング、忘れもしない、柊あずさがくる日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます