2回目03
「サヤは死んだわ」
何故。
英雄ギルドに行った時、コルナから知らされた。
世間話のつもりだった。
サヤとコルナは俺が来る前からの知り合いで、本当の姉妹みたいだった。
少し気になって、何の気なしに聞いたのだが、コルナから告げられたのは衝撃の事実。
そんなはずはない。そんな。だってサヤは健康で元気があって。
そして気づく。それは最後に見た数年間の姿。
そう思い出した。前回最初に会ったことを。
「あっあの」
俺は大金を持っていてうきうきしていた。何せ金貨一枚銀貨数枚持っている。プチ小金持ち状態だっ
た。
んっだれか呼んでいる。
周りを見渡しても誰も居ない。
んっ気のせいかな。
そんなときズボンを引っ張られた。
下を見ると、子供の姿が。
服装はぼろぼろのツキハギだらけ、体はがりがりに痩せており、唇もかさかさで頬も痩けていた。
「おっおらに何か用かな」
久しぶりに子供に話しかけられ、びっくりしてどもる。どもるのはいつものことだがなに言われるかびびっていた。
「おっ、お金くだしゃい」
か細い声だった。触れば壊れそうな手で精一杯手の平を広げる。
その時お金をもってたので、気が大きくなっていた。
手の平に銀貨三枚載せる。
「あっありがとぅー私、サーヤっていうのぉ、宜しくね」
その時、ぼろぼろの顔で、それでもサヤはにぱっと笑った。
知っていたのに、サヤの両親は蒸発して、サヤは村八分にされていた。
直接サヤに危害をくわえることはなかったが、みてみぬ振りをしていた。
誰も助けない。
俺だけが頼りだったのだ。思えば、サヤと俺とコルナ以外で他の人と話しているのを見たことがない。
俺とサヤは似たもの同士に見える。サヤが聞けば怒られそうだが。
俺は両親に見捨てられた。仕事しないでアニメとアイドルの追っかけをしていたので、とうとう両親がきれて、勘当されて家から追い出された。
友達も冷たい。2、3日なら快く家に置いてくれたが、だんだん邪魔者扱いされて、追い出された。心の友だと誓い合ったのに、畜生。
何とかしようと飲食店にバイト面接に行ったが、容姿で没にされ、親に泣きついてどうにかぼろいアパートの保証人になってもらい、日雇いで食いつなぐ毎日。
誰も信用できなくなり三次元に救いを求めた。
サヤとの思い出が走馬燈のように流れ込む。思えばサヤとしか遊んでいない。年は離れているが、この世界で唯一の友達。
お金は取られていたけど、サヤとの触れあいは楽しかった。
後悔してももう遅い。
涙をぐっとこられ、俺は何とかコルナにサヤの住所を聞き、前回かたくなに入るのを拒否され、『サーヤの家は誰かに聞くのもだめだらかねー。そんな事したらブータンと一生口聞かないからね~』と言われたサヤの家にきた。
サーヤの家は、村の外れの小さな平屋で壊れかかっていた。窓は割られ、外壁は落書きされ、穴が開いていた。
まだ馬小屋の方がしっかりしていた。
こんなとこで住んでいたのか。言ってくれればと思うがおそらく俺だとなにもできなかっただろう。
サヤは同情されたくなかったのだろう。まさに同情するなら金をくれだ。見た所犬はいなかったが。
そして、悪いとは思いつつも中に入る。
中は整頓されているというか何もなかった。それもそうだと納得する。前回は俺の金で色々と買っていたが、今回はその前だった。8畳ほどの部屋に粗末な布団。それとノートが置いてあった。
それを拝見する。それがサヤの心の声だと観が言っていた。
それはサヤの日記だった。
最初の日付は三ヶ月前。
お父ちゃんとお母ちゃんが帰ってこない。サーヤ捨てられたのかなー。きっとサーヤの事迎えにきてくれる。それまで我慢だよサーヤ。
俺は、自分の罪を見逃さないよう食い入る様に見た。
一週間後。
まだかってこないよぉ~、周りの人も冷たい。サーヤ良い子にしているのに嫌われちゃったのかな~。寂しいよぉ~。
一ヶ月後。
節約してたけどとうとう食料がなくなったよぉ~。ひもじくてつらいよぉ~。サーヤ死んじゃうのかなぁ~。怖いよぉ~。誰か助けてよぉ~。
二ヶ月後。
コルナお姉ちゃんが僅かだけど食料をくれるからまだ生きてるよ。コルナお姉ちゃんの家も大変で、いつもごめんねって言ってくれる。そして希望となることも言ってくれた。異世界人。英雄となった人はサーヤも知ってるよー。もうすぐこっちにくるらしい。サーヤに優しい人だったらいいなぁ~
そして昨日。最後の日記。
サーヤ良い子にしてるから、もうわがまま言わないから、だから神様サーヤを助けてぇ~。
ノートの上にぽろぽろと涙がこぼれる。あの時サヤは本当に最後のチャンスだと思って必死だったんだな。それなのに俺って奴は。
「サヤ、サヤ、サヤぁぁぁぁぁ」
俺はお金の変わりに大事な人を失った。
こうして二回目はバッドエンド確定ルートからスタートした。
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