おはよう女神様
翌朝の土曜日、起きてすぐにある違和感を感じる。
俺の左手に何か柔らかいものが触れている。
「……なんだろ?」
確かめるようにそれを触ってみる。
ふにゅっ
何故だろう。なんだか人としてとても最低なことをしているような気がする。それと同時にもっと触ってみたいという欲もでてくる。
もう一度、その柔らかいものに触ってみる。
「あっ、うっ」
今度は何か声が聞こえた気がする。
ん?今声がした?
まだ眠っている脳をフル回転させて考える。
そして、一つの結論が導きだされた。
姉であり極度のブラコンである
姉ちゃんは今会社近くのアパートに一人暮らしをしているが、たまに急に帰ってくる。
「拓斗お~。寂しかったよぉ」なんて言いながら。
何度か姉ちゃんは酔っぱらって俺の部屋にきて会社での愚痴を散々俺に聞かせたあげく、俺が寝ようとすると俺の布団に入ってきて、すやすやと眠ってしまうことがあった。
だとするとさっきまで触っていたのは……
「……よし、俺は何も触らなかった。うん」
しかし、姉ちゃんのやつ、俺の知らない間に結構育ったものだなあ。
昔一緒にお風呂に入ったときに大きいとは思ってたけど、……弟としては少しビックリしたよ。
そんなことを考えて俺はまだ眠たい目を擦りながら布団をめくった。
「おい、姉ちゃん。寝るんならちゃんと自分の部屋で……」
そう言いかけた途中で突如、俺の脳内は完全にフリーズした。
それもそうだろう。
「………………………えっ、誰この人」
なんとそこには女神様がいた。
さて、どうしたものか。
昨日の出来事をできるだけ鮮明に思い出す。
いつも通りに高校に行って、帰ってから華と部屋で過ごして、それから飯を食わずに寝たっけ。
そして今に至る。
わからない、彼女が何者なのかまったく心当たりがない。
しかし
「なんだろうなあ、どこかで見たことのある顔のような、懐かしいような」
なんだか俺は彼女のことを知っている気がした。
だが、視力の悪い裸眼(確か両目0.4だった)でははっきりとは顔が見えない。
俺はベッドの上から眼鏡をとり、彼女の顔をしっかりと確認しようと顔を近づけたその時だった。
「う、う~ん、……うん?誰?……ってキャアーー!?変態ー!!」
彼女は目を覚まして飛び起きると、俺からすぐに距離を取り、まるでゴミを見るような目で俺を睨んできた。
あれ?この状況なんかヤバくないか?
「ちょっと待て!!ここは俺の家だ。てか、俺からしたらアンタ不法侵入だし。とにかく、君は誰だよ!……って………え?」
俺はそこで初めて彼女の顔をしっかりと認識した。
長い黒髪に宝石のような紅い瞳。整った顔立ちの美しいその少女は俺のよく知っている人物にそっくりだった。
嘘だ、ありえないだろ。なんでいるんだよ。これは夢か?そうじゃなきゃ、説明できない。
俺は冷や汗が止まらなかった。何度も何度も彼女の顔を見つめる。
彼女は怪訝な表情を浮かべながらこちらの様子をうかがう。
俺が死ぬ程動揺しているのは、きっと当然だろう。
なぜなら、俺の目の前にいた女神様は、俺の推しにして『春は彼方』の登場人物
『仮屋沙友理』だったのだから。
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