二次元の推しが突然、現実世界に来たのでとりあえず一緒に暮らすことにしました

東雲 夜

序章

prologue

 ある日の昼下がり、ふと立ち寄った本屋で『はる彼方かなた』通称『はるかな』という漫画に出会った。


 簡潔にあらすじをまとめると、真面目な性格の主人公『小鳥遊たかなし雄二ゆうじ』が幼馴染みであり美少女の『たいら魁佐かいさ』と紆余曲折を経て結ばれるという所謂、ザ・王道ラブコメって感じの作品だ。


 突然だが、俺、神崎かんざき拓斗たくとはその漫画に登場する、とある人物に恋をした。


 ヤバい奴だとは自分でも自覚しているが、まあとりあえず聞いてくれ。


 彼女の名前は「仮屋かりや沙友理さゆり


『春は彼方』に登場する3人いるメインヒロインの一人である美少女だ。


 長い黒髪に宝石のようにキラリとした紅色の美しい瞳。彼女を一目見れば、どんな男でも惚れてしまう程に綺麗な子だ。


 そして性格は、優しくて一途なしっかり者キャラときた。


 そんな男の理想を全部詰め込んだような彼女は漫画のなかでも特に人気があった。


 『春は彼方』の人気投票では勿論、全4回ともぶっちぎりで1位であり、ファンからの人気も凄まじかった。


 漫画で初めて主人公にデレ出したあたりの破壊力といったら……それはもう可愛いすぎた。


 そして様々な恋人フラグを立てており、彼女がヒロインレースに勝つのものだと読者が確信していた時……事件が起きた。


 冒頭で述べた通り、なんと主人公は負けフラグを立てまくっていた幼馴染みの『平魁佐』を選んだのであった。


 果たして、『仮屋沙友理』が負けヒロインになるとは誰が予想できたであろう。


 漫画の最終回が連載された日、インターネット上では『春は彼方』の話題で持ちきりであった。


 言うまでもないが、ネットは荒れに荒れていた。


「どうして沙友理を選ばずに、散々負けフラグを立てていた幼馴染みを選ぶんだ!」


「今までにない神漫画だと思ったのに、最後の最後で全てを台無しにしたな」


「さゆりん推しにはさすがにキツすぎだわ」


 etc.


 かという俺も正直ショックで一週間はずっと引きずっていた。


 勿論、沙友理が選ばれなかった事に対してのガッカリもあったのだが、漫画最後の振られた時の沙友理の悲しそうな、今にも泣き出してしまいそうな横顔が、なんだか妙にリアルに感じてしまいずっと頭からからだ。


「俺なら、こんな風に彼女を悲しませたりしないのになあ……」


 読んでいた漫画を近くの机に置いて、再びベッドに寝転びなおしながら、俺は気だるそうに呟いた。


「たかが、漫画でしょ。2次元の創作物だし。いつまでも引きずってないで早く元気出しなさいよ」


 ベッドの横で携帯をいじっていた幼馴染みである『佐々木ささきはな』は視線を俺に向けて言った。


 茶色がかった髪にくりっとした目。そして見た目からは想像つかない程、家庭的で真面目な俺の良き親友だ。


「そんなことは言われなくてもわかってるよ。……それより華、幼馴染みってのはそんなに恋愛関係に発展するもんなのか?」


 俺はふと脳内に浮かんだ疑問を華に問いかける。


「はあ?アンタとあたしの関係を見ても、そう思うの?」


 華が鋭い視線を向けてくる。我ながら馬鹿な質問をしてしまったらしい。


「すまん、訊くまでもなかったな。俺らみたいなのは恋愛なんてものとは程遠いよな」


 俺は納得したように頷く。


 何故か一瞬、華が少しガッカリしたような怒ったような気がしたが……まあ、気のせいだろう。


「あっ、もう18時48分じゃん!門限ヤバいからそろそろ帰るね。それじゃ……またね」


「ああ、気をつけて帰れよ」


 別れの挨拶を交わした後、華は慌てて部屋を飛び出していった。


 彼女の家はここから5分程度の場所にあるのだが、なんと言っても彼女の父が門限に厳しく、前に少し遅れた時には一週間学校以外の外出が禁止になったらしい。


「まったく、せわしない奴だな」


 華がいなくなり、部屋の中に静寂が訪れる。


 話を聞いてもらったおかげで少し気持ちが楽になったからか途端に睡魔が襲ってきた。


 そういえば、ここ最近ぐっすりと熟睡なんて出来ていなかったな。


「今度、アイツが好きなミルフィーユでもおごってやるか」


 そう言ってベッドに寝転がったまま、俺は目を閉じる。


 眠る直前に何故かまた、沙友理の悲しげな横顔が頭に浮かんだ。


 しかし、いつも頭の中に浮かぶ映像と今見えている映像では何か少し違って見える。


 よく見てみると、彼女が何かをしゃべっているのに気づいた。


 なんだ?彼女が……何かを俺?に向かって一生懸命伝えようとしているような……


 結局最後まで何を言っているのかはわからないまま、そこで俺の意識は完全に途切れてしまった……






 翌朝起きて目が覚めた時、まさかその仮屋沙友理本人が横で眠っているとは、この時の俺はまだ知る良しもなかった。










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 どうも、初めまして。東雲夜と申します。

 まずはこの作品を読んでくださってありがとうございます。

 今回の作品が初投稿ということもあって、文章がぎこちなくて読みにくい点がいくつもあるかと思います。

 それでもなんとか、私の中にあるものを上手く伝えられたらと思い書いておりますので、もしよろしければコメントにて、感想と一緒に指摘してもらえると助かります。

 これからもちょくちょく更新していきますので応援よろしくお願いします。

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