9、「じゃあ、お願い聞いて貰おうかな」
前回、見事レノン達はジャコーキーを追い払うことに成功しました。以上。
皆さんなら猫耳美少女になんでも命令出来るとしたら何をお願いしますか?
さて今回休憩回(短い)です。が、最後にルナちゃんが……
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9、「じゃあ、お願い聞いて貰おうかな」
「一人で暮らしてるの?」
「は、はい、一人です」
「ちゃんと食べてる?」
「食べれてないです……私狩りとか苦手で……」
「いつもは何食べてるの?」
「お、お肉とか、木の実とか、お芋とか、です」
「木の実食べなかったの?」
「実は……木登りも苦手なんです……」
拠点に着いた俺たち三人は、昨日から弱酸に漬けていたネズミモドキの肉を食べながら、話していた。
否、ヒナタがルナを質問攻めにしていた。
「猫って木登り得意ですよね? レノンさん」
「え、あぁ、まぁ、うん、でも個体差あるし一概には……」
「あ、確かに。ルナちゃんは高いところ怖い?」
「あ、いえ、爪が……」
「爪?」
「私の爪、鋭過ぎて、木に引っ掛からないから登れないんです……」
俺は獣人の身体に向いたとてつもない興味を必死に抑えた。
(爪ってどう生えてるのかな、出し入れできるのかな、蹠行性に変わってるのかな、鎖骨は繋がってるのかな)
溢れ出る興味をそのままルナにぶつければ、変態のレッテルが貼られそうだ。そう思って興味のないふりを続ける。
「勝利の後の飯はウマイナァ」
「そうですね、酢漬けは成功みたいです」
「はい! このお肉柔らかくて美味しいです!」
酢漬けにした生肉を焼いただけだが、それなりに美味しくなっている。正確には、美味しい美味しいと思わないと気が狂うことを本能が察している。
「酢漬けと言えば、レノンさんにもあの酸の雨、かかってましたよね……?」
ヒナタが顔色を伺うように尋ねてきた。
「まぁ人間が触れても大した事ないpHだから、俺は大丈夫」
「ぺーはー?」
「ザコオニには効果あるって、分かってたんですか?」
「俺たちの食料全部持って行かれたけど、この酢漬けだけ残ってて。肌弱いのかなーて思っただけ」
「観察眼凄いですよねぇホントに……」
「アハハ」
「あの、私は何をお返ししたらよろしいでしょうか……? 以前もご迷惑をおかけして、今日も助けて頂いて、その上食べ物まで……」
ルナが恐る恐る、しかし強い意志を持ってそう言った。
「そんな、気にしくていいのに」
ヒナタはそう言うが、ルナはどうしても納得がいかないらしい。
「私たちネコ科獣人は、人間様に御奉仕するためにいるんです。御奉仕……しなきゃダメなんです……」
俺とヒナタの上になんとも言えない重たい空気が乗る。
生きている世界が違うと、この時俺はこっちに来て初めて思った。
少し考えて、俺は口を開いた。
「じゃあ、お願い聞いて貰おうかな」
「は、はい、何なりと」
「俺たち、このせ……大陸の生き物を調べに来たんだ。だからその手伝いをして欲しいんだけど、どう?」
「えと、生き物を調べる手伝い……ですか?」
「そうそう」
想定と違うものが来たのか、ルナは少し戸惑っているようだった。
「具体的に言えば……」
と前置きして考えたが、この言葉に尽きると思った。
「一緒に暮らそう」
「……それだけですか……?」
「そう、それだけ。仕事分担したり、一緒にご飯食べたり」
「いいですねそれ。私とレノンさんとルナちゃんの3人で暮らす」
ヒナタが賛同してくれた。
「わ、わかりました! 不束者ですが精一杯お役に立てるよう頑張ります!」
ルナは力みながらそう言った。
(なんかどっかズレてるような気もするけど、まぁいっか)
そんなことを思いながら、俺は笑って頷いて見せた。
それから数日。
人手が増えたことで、単純な労働力が上がった。これは非常にありがたい事で、単純作業であるロープ作りや資材集めが捗る捗る。
「今までが嘘みたいにストーリー進むね」
「RPGじゃないですけど、言いたいことは分かります」
ルナはあの日、直ぐに俺たちの拠点に引っ越してきた。とは言ってもほとんど荷物はなく、寝ぐらから持ってきたのは小さなリュックだけ。
その中からは、銅貨が数枚と錆びてボロボロの短剣が出てきた。
「これ、差し上げます。少しですが」
ルナはそう言って荷物の全てを捧げてきた。
(使役してるわけじゃないんだけどな……)
俺はそう思いながら、ルナの耳がピンと立ってこちらに向いているのを見つける。
「じゃあ、ありがたく頂こうかな」
俺はルナの手から小銭と短剣を受け取る。すると横からヒナタが小声で話しかけてきた。
「いいんですか? 貰っちゃって」
「うん、でもちゃんと保管しておく」
見るとルナは静かにだが、とても嬉しそうな表情をしていた。
そんなやり取りがあり、数日経ち今に至る。
ルナはよく働いた。ロープ編みも不器用ながらに頑張ってこなし、よく効く耳と鼻を活かして罠の設置場所や可食かの判断をしてくれる。
特に爪の切れ味が抜群で、獣の革なんてなぞっただけで切開することが出来た。
今まで石器のナイフで地道に切っていたのに、と二人で涙を流して感動した。
夜はヒナタと奥で寝てもらった。ヒナタ曰く「ふわふわで温かくて気持ちよくて好き」だそうだ。
コンプラ的にもこれで大丈夫。そう思って安眠した矢先、それは起こった。
「レノン様……」
眠りに落ちかけていた俺を、ルナのか細く震えた声が呼び覚ます。目を開けると、ルナが不安そうに、間近で俺の目を覗き込んでいた。
次回「……私の事、抱いていいんですよ……?」
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