6、「ショットガンね、……作れるか!」
前回、異世界勢初キャラでした。ルナちゃん可愛い好き。
そしてレノン達は何かに襲われていますね。シレッとヒナタがレノン呼びに変わってるの好き。
自画自賛嫌い。
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6、「ショットガンね、……作れるか!」
「なんだあいつら……」
俺の脳は直ぐに覚醒した。明らかな敵意を感じる。
そしてよく見ると、身長の1.5倍程の長さの槍を持った人影が拠点を囲うように数体。ほとんどが同じように武器らしきものを持っている。
「狙われてるのか、俺たち」
「みたいです。起きて水飲みに行こうと思ったら見つけて」
「怪我は?」
「接触はしてません。直ぐに戻って今に至ります」
逼迫した顔と違って冷静に状況を説明するヒナタ。面白い。
「とにかく会話を試みよう」
俺はゆっくりと立ち上がり、両手を上げて拠点の外に歩み出た。
「こちらに敵意はない! 話塩塩!」
「……」
「まぁ通じないよなぁ」
などと俺は余裕ぶってほざく。
何か武器になるものを周りで探すが、見当たらない。石器のナイフは簡易的な道具箱に入れたままだ。地味に遠く、下手に取りに行くと殺られる危険がある。
せめて長い棒切れでもあれば、と思ったのだが、そう世間は甘くないらしい。こんな装備じゃマジで大丈ばない。
「……ちなみにですけど、私たちって死んだらどうなるんでしたっけ」
「現世に強制送還……」
「こっちで復活は……?」
「……1ヶ月近く無理かな……戻ってきても体は初期値だし、多分初期スポから」
「じゃあ、痛いし極力死にたくないです」
「普通に同感」
今日まで体を大きくしようと筋トレ頑張って、ある程度の体躯を手に入れたんだ。リセットは嫌だ。
遂に人影たちが動き出した。ジリジリと詰め寄ってくるのがわかる。近づいてきた事で、だんだん視覚的に情報を得ることが出来てきた。まず、奴ら身長が1m程度しかない。
「あれ、ちっさい……」
ヒナタも気がついたようだ。
そしてつまり、あの槍も1.5m程度だ。侮れはしないが、初見の威圧感は薄れていく。
そう思うと冷静に観察することが出来た。鬼のような形相と額に生えた一本の角、大きく尖った耳。小さな体躯にはローブを纏っており、槍を構える腕には筋が浮いている。
(ちょっと剛力でヤンチャな小学生……いや、無理があるか)
奴らは淡々と、ジリジリと拠点に近づいてくるが、俺たちは何も出来ない。武器になるものもなければ飛び込む勇気もない。ただ様子を伺いながら身構えるしか無かった。
「何が目的だ? 言葉通じてる?」
とか何とか声をかけたが無反応。ルナほど人間に近い種族ではないらしい。
奴らは洞穴の入口に差し掛かったところで、動きを停めた。一瞬アイコンタクトをしたかと思うと、今度は特に屈強な二体が洞穴に入ってきた。
「ちょっとちょっと、そろそろ何か言ってくれよ……」
「殺す気は無いんでしょうか……」
詰め寄られてはこちらは後ずさるしかない。遂に最奥まで追いやられ、俺はヒナタを背に隠す。
と、ここで奴らの進軍は停止した。
「イアヌコグ、オレミジャフカヤハ!」
入口にいた一体が何か叫んだ。
なるほど、やはり独自の言語を持っていたか。と俺は納得。言葉の壁はどこの世界にもあるらしい。
「エトムブネズ!」
「アテクチム、ウキヌオサム!」
洞穴の外から複数の声が聞こえてきた。加えて騒がしい物音。どうやら隠れていた別の個体が俺たちの荷物を漁っているらしい。
「ウタイアムエロク!イヒイアフオィク」
なんか嬉しそうだ。どうせ保存食に加工しておいたデカネズミモドキの肉でも見つけたんだろう。盗られるのは悔しいが仕方ない。
「エマヅキノノク、イアネレバツ」
「ウレチウストニアップス、イアネラワス」
しばらく漁ったかと思うと、また声がした。
「イラウォ、ウレアク」
すると俺たちを脅すように槍を突きつけていた奴が、警戒しながらもゆっくり洞穴を出て行き、外に出るや否や走って逃げていった。
「……行きましたか……?」
「行ったね。盗賊みたいな習性なんだね」
「ホント根っから学者ですよね……」
幸いにもお金になり得る資材は残っていたが、
想定通り、集めておいた食料のほとんどを奪われたようだった。
いくつかの残された食料を見て、俺は首を傾げる。柔らかくなるかと実験的に薄めた酸につけていた肉が残されていた。
「ああいうのもいるんだね」
「ルナちゃんと言い今のと言い、ある程度森の危険について情報がない事に危機感を覚えました」
「だね。今のは堪えた」
「……ルナちゃん、大丈夫でしょうか」
フッと空気が重くなった。確かに奴らに襲われてルナちゃんが死にでもしたら、気分が悪い。
「確かに心配だね、痩せ細ってたし……大人しくしててくれればいいんだけど」
「私、探してます!」
「ちょっと待った!」
俺は焦るヒナタを捕まえて制した。
「今俺たちが行って、また奴らに遭遇しても戦うスベがない。武器を作ろう」
ヒナタは一瞬顔に焦りを滲ませたが、納得してくれたようだ。
「分かりました。じゃあショットガン作ってください」
「ショットガンね、……作れるか!」
「はい完成」
「ショットガン?」
「いやいやまさか」
俺は数分で、丈夫に編んだロープを更に編んで、ベルトを作り上げた。
「あ、ムチですか?」
「そうも使えるけどね、違うんだー」
手頃な石ころを拾って、ベルトの中腹に作った浅いポケットに入れる。そして両端を持って振り回す。いい頃合でベルトの片方を手放すと……。
石ころは見事狙い通りに豪速で吹っ飛び……どこかに飛んで行って、消えた。
本当は手頃な太い木を狙ってたんだが……。
「うわ! 飛び道具ですね!?」
「簡単なスリングだよ」
ヒナタは素直に感心してくれていた。笑われなくて一安心。
「私もやってみていいですか?」
「うん任せた!」
こういう運動技能は俺よりヒナタの方が絶対断然圧倒的に向いているんだ。
ヒナタは俺がやったように、スリングをブンブンと振り回す。既に俺より回転が早い。
そして綺麗なフォームで石を射出した。俺が狙った木のスレスレを掠める。
「あー、なるほどです」
「お、コツ掴んだ?」
「マグレでなければ或いは」
「いや流石だわ」
もう一度ヒナタが撃つと、完璧に狙い通り、しかもとんでもない威力で射撃に成功した。石が……いや、弾丸が木にめり込んでいるのは多分気のせいではない。
ヒナタは無邪気にガッツポーズをしているが、俺は少し焦った。
もしかしたらとんでもないものを渡してしまったのかもしれない。
俺たちは手頃な大きさの石を拾いながら、最初にルナと出会った場所に向かった。もちろんスリングの他にも、近接用に石器のナイフを手頃な棒に括りつけて槍っぽくして持ってきている。
「この獣道、ルナちゃんも使ってたんでしょうか」
「可能性は十分にあると思う」
「どっちだろう……あれ?」
獣道のどちらに進むべきか悩んでいると、ヒナタが何かを見つけたようだ。
「レノンさん、あれってさっきのやつらの足跡ですかね」
ヒナタが指さす先のぬかるみに、人間の子供のような足跡がある。サイズや形状からして間違いないだろう。
「だね、追おう」
「あれ、でもあのちっちゃいのの後を追っても……」
「確かにルナちゃんがいる証拠ではないけど、もしこっちにルナちゃんがいるなら危険だ。逆側にいるならまだ猶予はある」
「……分かりました、そうしましょう」
周囲を警戒しながらしばらくその足跡を追った。徐々に足跡は増えていき、握った拳に緊張が走る。
いつどこに奴らが現れるかわからない。既にルナちゃんは無事ではないかもしれない。武器こそ作ったが、太刀打ちできるかわからない。そんな不安が心の中で膨張していく。
「ストップです!」
ヒナタが小声で叫び、俺の腕をガシッと掴んだ。
「ファ!?」
普通に驚く俺。情けない声を出してしまった。
「あそこ、罠です」
「えっ」
ほんの1m先の地面が、よく見ると不自然に埋め立てた痕がある。多分次の足であそこ踏んでた。
「うわマジか……ありがとう助かった」
「私たちが使ってる簡単な吊り下げ式と同じ原理の罠です。クオリティは低いですが、野生動物なら或いは」
「あいつらが仕掛けたのかな……て」
「?」
この時俺はハッキリと、ルナのセリフを思い出した。
(てっきりジャコーキの罠かと……て言ってたな……。これもしかしてジャコーキの罠!? そのジャコーキというのがさっきの、あのちっこい鬼みたいな奴らだとしたら……)
「ん……!?」
「え?」
(ジャコーキ。ジャコーキ……。ちっこい鬼……小鬼……。邪、小、鬼……!?)
邪小鬼と書いて、ジャコキと読み、それが語源だとしたら。
「繋がった!」
「だから何がですか」
「ジャコーキだよ! ルナが言ってたジャコーキ、あいつらの事だ!」
「……あのちっこいの、ジャコーキって言うんですか?」
「多分そうだ。この罠も奴らのものだとしたら、ルナがまたかかってるかも」
頭から少量の煙を出しながら、ウンウン、とヒナタは頷いた。
「解体して回りましょう」
次回「うぎゃああ!!!」
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