2、「それって、異世界転生ですよね!?」

前回、恩師の柏田先生からのメールにレノンは返信しました。物語はここから始まった……(2話目にして)

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2、「それって、異世界転生ですよね!?」



 柏田先生に返信を寄越したのが、全ての始まりだった。


 あれからトントン拍子に話が進み、俺は今から職務説明を受けに、アストロバイオロジー研究センターに足を踏み入れる。


 どうも特殊な研究活動らしく、細かい説明を聞いてから職に就くか判断していいそうだ。


 それだけ危険が伴うとか、キツイ仕事とか、本人の同意が無ければ就く事が出来ないのだろう。


「お待ちしていました。建雪怜音さんですね」


 敷地に入ってすぐ、警備員の男性に呼び止められた。俺は肯定の返事をし、誘導されるまま警備員について進む。


「こちらにどうぞ」


 しばらく歩いた先で大きな建物に入り、関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉を警備員が開いた。

 扉の先の部屋は、よく見るような研究所の事務所。ワークデスクが数十並んだゴチャゴチャした空間だ。


(わー懐かしくて安心する……)


 俺は大学の研究室を思い出し、緊張が和らいだ。


「建雪怜音さん、いらっしゃいました」

「お、来たきた」


 反応を示したのは、作業服を着た白髪混じりのおじさんだった。


「ようこそいらっしゃいました、建雪さん。私、室長の真田清光です。よろしく」

「見学に参りました、建雪怜音です。よろしくお願いします」

「はい、よろしく。まずは応接室にどうぞ」


 タバコ焼けか酒焼けか、ハスキーな声の真田は奥にある応接室に向かった。俺は促されるまま着いて行き、応接室に入る。


「もう一人いるんですが、一緒に説明しますんで」


 応接室の中には、真田の言う通りもう一人、髪の長いスーツ姿の女性がソファに既に座っていた。俺たちが入ってきたことに気がつき、スっと立ち上がる。


「彼女はもうここに就職決定してくれたんです」

「初めまして、青井陽詩です。本日はよろしくお願いします」


 ハツラツとした自己紹介に、思わず俺は気圧されてしまう。

 まだ無邪気さや幼さが残る顔立ちの陽詩だが、俺より礼儀正しい印象を覚え、何だか萎縮。


「建雪怜音です」

「じゃ、そっち座ってください」


 俺は陽詩の隣に腰掛けた。真田はその正面に腰掛け、用意していた書類をテーブルに広げた。


「では、この研究室が設置された経緯からお話しましょう」


 真田はこんな事を話し始めた。


 ここ10年で、世界各地の遺跡や墓からある水晶玉が複数発見された。

 大きさはソフトボール程度、占いで使われるようなよくある水晶玉だ。


 一見普通の水晶玉だが、それらには特別で奇妙な性質があった。


 ある一点から水晶玉を覗くと、映るはずのない景色を見ることができる。その性質が報告されてすぐに、先進国各国家は秘密裏に研究に乗り出した。


 日本も例外ではなかった。出来得る限りを尽くして、世界中から3つの水晶玉を回収し、それらを全て投じて研究をスタートさせた。


 数年かけて、JAXAや理科研など名だたる研究組織の協力の元、少しずつだがこの水晶玉の性質を突き止めることに成功する。


 まず、映し出されているのは現代の地球の光景ではない。

 原型は似ている箇所もあるが、映し出されている世界はまるでファンタジーの世界だった。


 見たことの無い生物が暮らし、ドラゴンが空を舞い、魔法が飛び交う。

 手付かずの荘厳たる大自然が限りなく広がり、様々な種族が暮らし、交流している。

 いわゆる異世界を、水晶玉を通して占うように見ることが出来る。


 さらに研究が進み、この水晶玉は異世界と現世とを、光が相互的に行き来することが出来ると判明した。

 つまり、こちらの世界から向こうの世界に光を送ることも出来る。光による干渉が可能ということだ。


 その発見から数年だった現在、日本の科学力を駆使して開発されたのが、異世界に調査員を送る装置。つまり[光学プリンター]と[神経電位転移装置]からなる[ポータルポッド]。


「お二人には、アナザーワールド、つまり異世界に出向いて、生態系や資源、社会の調査をして頂きたい」


 真田がそう話を括った。


「それって、異世界転生ですよね!?」

 瞳を輝かせて陽詩が言う。


「厳密には、生まれ変わるわけじゃないから転生ではないですよ。言わば出張?」

 真田が答えた。


(異世界に行って調査する仕事って……)

 確かに、それなら柏田先生は行きたがらないはずだ。あの人はフィールドワークをしたがらなかった。




次回「うわ……異世界……来ちゃったわ……」

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