倫理の衝突、その答えは至ってシンプル

最終話まで拝読させて頂きました!
まず、一作目で長編を書き切ったなごちさんすげぇ〜!って感想が真っ先に出ました!自分も長編を一応書き切ってはいるんですけど、その前に何作か頓挫してからだったり、合同相手の方の応援ありきだったりとかなり難しかったので……!

シナリオの展開も主人公と先輩の美しい出会いから始まり、その後はほのぼのとした日常の中に潜む闇の描写に読者視点でハラハラしたり……緩急が上手く、読んでいて飽きさせない筆力を感じました!
主人公の行動の動機がただ「自分を救ってくれた人を苦しみの世界から救いたい」というシンプルなものなのも、真っ直ぐで共感しやすく好きですね。

次第に明らかになる都市の欠陥……文字通りのタイトル回収も個人的にめちゃくちゃカッコいいなと思います。情景描写が具体的且つ言葉選びが美しいので、主人公が異能に目覚めるシーンや終盤でのとある罪の痕の描写など、読みながら脳裏にアニメーションが浮かぶほど想像しやすかったです。『龍と薄明の空』はもう新⚪︎誠さんのアニメですね……(こら)

そして一番好きなのは、呪術という非現実的なテーマを主軸に扱った上で、物語の終わりはあくまでもそれらに対して現実として向き合っていくというところですね……!主題が主題なだけに、その点をファンタジーで終わらせずに向き合う物語として描ききった点になごちさんらしさを感じました!

ラストシーンが晴天でなく曇天で終わるのも良いですね。作品のテーマを背景で表しているのが伝わってきました。彼らがこれから行く道は険しいものかもしれませんが、一人ぼっちじゃないから大丈夫だ、という希望が見えました。面白かったです!