〜勝ち誇った桜木くんと如月くんの頭脳プレー〜
「茜!?」
あたしの叫び声を聴いた、カケルと梨花ちゃんと如月くんが部屋へ乗り込んできた。カケルはあたしの乱れた服や胸元を見て、拳を固く握っている。桜木くんは驚いた表情で訊いた。
「何でお前らがここに!?」
カケルはひどく怒っていて、気付いたら殴り飛ばしていた。それから、梨花ちゃんを見ながら指示を出した。
「梨花さん!!茜を連れてここから出ろ!!」
「うん!!」
梨花ちゃんはあたしの手を掴んで、ここから連れ出してくれた。
「大丈夫?」
「うん……」
彼女はあたしの胸元にたくさん付けられたキスマークを見て、あたしを泣きながら抱きしめた。
「茜ちゃんごめんね。助けるのが遅くなって
……」
「あたしこそごめんね……本当のこと言えなくて」
「本当のこと?」
「桜木くんと付き合った理由だよ」
「そういえば何でそんなことになったの?」
涙を拭きながら訊かれ、理由を話した。それを聴いて桜木くんに「信じられない!!サイテー!!」と激怒していた。怒っている姿も可愛いな。彼女の手を握ってお礼を言った。
「梨花ちゃん助けに来てくれてありがとう。また学校に行けなくなるところだったよ……」
安心したからか急に涙が溢れてきた。それを見た梨花ちゃんが、あたしを優しく抱きしめた。突如、上の階からドタンと大きな物音が響いた。
「何……今の音」
「二人に何かあったのかも!!見に行ってくる」
梨花ちゃんが涙を拭って部屋に戻る。あたしも服を直して後を追う。部屋に着くと、カケルが倒れていて如月くんが抱き起こしている姿が目に飛び込んだ。
「どうしたの?カケル何かあった!?」
「実は……」
彼が話そうとしたとき、ヤツが遮った。
「聴いてくれよ。さっき梶原に暴力を振るわれたんだ!!ほら、証拠もバッチリ写っているだろ!?」
写真を見せながら興奮した様子で訴えかけている。
「しかもさ、この俺からお前を奪うって宣言してきたんだけど!!コイツのこと追い払いたいからさ、コレをSNSにアップしようと思うんだ!!そうしたら、俺たちの仲を引き裂こうとする連中がいなくなる!!良い考えだと思わないか?茜」
さっきから一体何を言ってるんだろう……。そもそも、あたしは早く別れたいのに!!だから、勇気を出してヤツの顔を見ながら言った。
「全然思わない!!それに、あたしはあんたと別れたい!!」
するとヤツは高笑いをしながら、あたしに写真を見せながら脅してきた。
「俺に歯向かうっていうのか面白い!!梶原だけじゃなく、お前のハメ撮り画像も一緒にアップしてやるぞ!!これで中学時代と同じように……いや、学校どころか町中も歩けなくなるなあ!!」
「ねえ……どうするの?この状況……あんなヤツに負けたままでいいの!?」
如月くんもさすがに黙り込んでしまった。そして、カケルは拳を握って悔しそうな表情で俯いている。すると、如月くんが笑顔で言った。
「大丈夫!!俺の辞書に負けるなんて言葉はないから」
ヤツは勝ち誇った様子であたしたちをバカにしてきた。
「今更何やったって無駄だ!!俺に逆らったこと後悔するんだな!!」
もうダメだ……アップされてしまう。
そのとき、あたしたちは全てを諦めていた。しかし、意外なことが起きた。
「あれ……?サイトに入れない」
如月くんが勝ち誇った表情で言った。
「悪いけどお前のアカウント凍結させてもらったから」
「なっ!?」
「梨花から中学時代の話を聴いてさ、アカウント探してすぐ違反申告したんだ。そしたら、すぐに申請通ったよ。それよりも学校に行けなくなるのはお前の方だ!!」
みんなにスマホの画面を見せると、今も撮影モードで撮り続けている。それを見たカケルが思わず突っ込んだ。
「そんなのいつ撮っていたんだよ!?」
「実はこの部屋に入る前から、胸ポケットにスマホを仕込んだ状態でずっと撮影していたんだ。何かの役に立てばと思っていたんだけど、まさかこんな形で武器になるなんて思わなかった」
「すごい……如月くん」
あたしはただただ、圧倒されていた。この状況で動画を回すなんて発想が思いつかない。
「もう切り札があるなら言ってよね!!心臓に悪いじゃない」
梨花ちゃんが頬を膨らませて怒っている。それが可愛いかったようで、「ごめんな」と言いながら頭を撫でる。
「敵を欺くにはまず味方からっていうだろ?」
梨花ちゃんは惚れ直した様子だった。頼もしい彼氏がいて本当羨ましいな。
すっかり腑抜けているヤツに取り引きをもちかけた。
「この動画をアップされたら、お前は学校に行けなくなるな。今すぐ画像フォルダーから二人の画像を一枚残らず消し去れ。それから俺たちに今後一切関わるな。この約束を守ってくれたら、俺も動画を消してやるよ」
頭がとれそうな勢いで上下に振る。消しながら更に追い討ちをかける。
「昔、梨花や木内さんを苦しめたことに対して制裁を加えてやりたいけど。お前と同じレベルに墜ちたくないから我慢してやるんだ。優しい俺様に感謝しろよ」
般若のような表情で言う彼に誰もが敵に回したくないと思った。
数分後、作業が全て終わったことを確認して、ここから出た。ちょうど玄関でヤツの母親と鉢合わせた。
「あら、もう帰るの?差し入れ用意したんだけど」
両手で持っている買い物袋からお菓子がたくさん入っていた。申し訳なくなり丁寧にお詫びして家から出た。
続く。
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