〜あたしのことは放っておいて!!〜

 帰りながら梨花ちゃんにRineで報告した。すると、すぐに電話がかかってきた。

「何で!?何であんなヤツと付き合うことになったの?」

「……梶原くんに毎日告白されるのがしんどくなったからかな。だから、桜木くんと付き合えば諦めてくれるかとも思ったんだ……」

「だからって……」


 梨花ちゃんが言いたいことは分かる。だから何と言われても後戻りはできない。

「ごめん……もう決めたことだから」


 そう言って電話を切った。


※※


 翌日の朝、いつものように廊下の掃除をしていると、カケルがやってきた。

「おはよう!!」

 彼はあたしと目が合うと慌てた様子で「おおお……おはよう!!」と挨拶をする。


 彼は何か言いたそうな表情で、あたしを見ている。すると、彼が発するより先に桜木くんがやってきた。

「おはよう茜!!」

「おはよう桜木くん」

 笑顔で返すあたし。

それを見た彼は言葉をつぐんで教室へ入っていった。あたしが笑顔で桜木くんに接している姿を見ていられなくなったのだろう。


「今日の放課後空いてる?」

「うん」

「決まりだな。楽しみだなぁーー」

 やり取りを見た周囲の人たちが「あの二人本当に付き合い始めたんだ」と話しているのが聞こえてくる。


 桜木くんと付き合い始めたという出来事が、あっという間に校内へと広がっていった。また、教室に入ると如月くんが落ち込んでいる彼に懸命に話しかけているのが見えて、なんだか申し訳ない気持ちになった。


※※


 授業中、彼が一学期とは打って変わって勉強に励んでいる。それを見た先生が声を掛けた。

「梶原!?お前一体どうしたんだ?熱でもあるんじゃ……」

「二学期から心を入れ替えて勉学に励もうと思って」

「できれば一学期から頑張ってほしかったなーー」

 あたしもその姿を見て純粋にいいと思っていたら、心の中で思ったことを口にしていた。

「やるじゃんカケル!!」

 先生に釣られて彼を褒めると、嬉しそうな表情を浮かべていた。


※※


「ちょっと茜!!」

 昼休みになると、友人たちから突撃された。

「な、なに!?」

「あんた彼氏つくらないって言ってたじゃん!!一体どういうことか説明してもらうわよ!!」

「いずれ話すつもりだったんだけど……タイミングが合わなくて……」

 

 それを見た男子たちも押し寄せてきた。

「木内さん!!何であんなイケメン野郎と付き合うことになったんだよ!?」

 

 男女から質問攻めに合って困っていると、彼が立ち上がって言った。

「そういえば先生がお前のことを呼んでたぞ。俺も用があるから一緒に行こう!!」

 あたしの手を引いて教室から連れ出してくれた。


「ありがとね。助かったよ!!」

「やっぱりみんなも気になってるんだな」

「そうみたいだね……」

「あのさ……」


 言いかけたとき、「茜!!」と叫びながら、バタバタと大きな足音が聞こえてきた。

「桜木くん!?」

「お前が質問攻めに合っているって聞いてさ。大丈夫か!?」

「うん大丈夫。心配してくれてありがとう」

 彼は安堵の表情を浮かべた。それから、あたしとカケルが手を繋いでいるところを見て、「いつまで繋いでんだよ!!」と怒って強引に引き離した。


「桜木くん。あのねカケルはあたしのことを助けてくれたんだよ」

 苦笑いをしながら礼を言う。

「ありがとうな。を助けてくれて。あとは俺に任せて教室に戻っていいよ」


 嫌味な言い方で追い払おうとする。彼は怒って教室に戻ろうとすると、桜木くんが追い討ちをかけた。

「そういえばお前、茜にたくさん告ってフラれたヤツだよな?残念だったねーー想いが届かなくて!!ご愁傷様ーー」


 笑いながら言われて我慢の限界を迎えたのか、拳を固く握って立ち去っていった。


「さすがに言いすぎよ」

「別にいいじゃんか。本当のことなんだから。それよりも名前で呼ぶなんて……アイツのことが好きなのか?」

「ただの友達を名前で呼んだら悪いの?」

「ふぅーーん。ただの友達ね。俺の女だって自覚がまだ足りないようだな」


 そう言ってあたしの手を引いて人気のない場所に行き、キスをした後首筋へと舌を這わせていく。それから胸に手が伸びた瞬間に腕を掴んで止めた。

「やめて……」

「これからはそう簡単にアイツに心を許すな。分かったか?」

 ただ頷くことしかできなかった。


※※


 教室に戻り、梶原くんに謝罪した。

「さっきはごめんね。桜木くんが酷いことを言って……」

 彼はまだ怒っている様子。それから、あたしの顔を見ながら言った。

「あのさ……何でアイツなんかと付き合ってんだ?一体どこが良かったワケ?」

 

 うるさいな……何も知らないくせに。ほっといてよ……。


「そんなのアンタには関係ないでしょ!!」

 売り言葉に買い言葉になりそうだったので、今日はもうお互いに言葉を交わすのを辞めた。


続く。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る