小雨の降る道
@tanpurasoba
短編
シトシトと雨が降る夜道を一人古いビニール傘をさした青年が独り歩いている。彼は雨が嫌いではなかった、しかし青年期特有の孤独感と精神的疲労、それらから来る論理的でしかない考えを心に浮かべ義憤に駆られたような、少しあきれたかのような表情をしていた。その考えは理屈付けはされていても誰かにぶつけたいがためのものだということはその青年にもとっくにわかっていたからだ。彼は自分の本心を誰にも語らなかった、その考えをいつも一人になると反芻している、凝り固まったその考えを疑わない理由は若さから来る傲慢ではなく自分が精神的優位を保っていると信じることで自分を安心させようとする心と自分の性根を白日の元に晒したくないという幼稚で臆病と言える感情だ。それにも薄々気が付いている。雨特有の苔を蒸したような匂いを感じながら青年は考えた、人はみな私と同じように誰にを己の考えを明かさず生きているのではと、しかしそれを確かめる術はない、心の中のことは誰にも、本人にすらわからない結局人はいつだって孤独を感じている。彼はどんなに時でもどこか一歩引いて俯瞰してしまっている。人は独りで歩いている。青年は家が着くとと普段通りの顔に変わり「ただいま」と言った。一人の人間は人でないのかもしれない。
小雨の降る道 @tanpurasoba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。小雨の降る道の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
うにゅほとの生活/八白 嘘
★13 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1,095話
MY LIFE/船里葵
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 6話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます