第125話

長い通話が終わった


結局いつも同じ様な内容

「早く鳳凰院隼人を落とせ」だ


それでも今回は珍しく違う内容を喋ってきた

なんだと思う?

「岡山のような底辺の支部で勝ち上がれないくせに調子に乗ってサポート生になんかなるから危険な目にあうんだ!!大人しくしてろ」だそう

死にかけた娘に対して言う事がこれだそうだ


父様はそんな人だし家が家だから仕方ないのも分かってる

それでもかなり心にきた

嘘でもいいからせめて一言「無事でよかった」と言って欲しかった

でも叶わない願いなんて抱いても仕方ない


それならせめて「よくやった」と褒めてもらいたい


まだまだあると思っていた時間は、気付けば卒業まであと何ヶ月と数えるようになった

正直、鳳凰院様にあまりアピールは出来てない

勝率はかなり低いかも知れない

相手も同じ様な義務を持った人だ、私の外見ならなんとかなるかもしれない


校長室へと向かう


そう言えば1年の頃は校長室へと向かう道がいつも違うのが理解出来なかったな…


霊力センサーを使えるようになった今なら簡単に探せる


コンコン


藤原「失礼します」


校長「やぁ、どうしたんだいこんな急に」


相変わらずの顔面偏差値である

眩しい


藤原「ちょっと話がありまして…」


校長「ふふっ、2人だけなんだし昔みたいに話してよ。「隼人お兄ちゃん」って」


藤原「もっ!もうっ!!やめて…ください」


意地悪な顔も素敵だ

こんな素敵な人に好かれる人はなんて幸せ者なのだろう


校長「ごめん、ごめん。それで?何の用かな?」


藤原「えっと…」


言葉に詰まってしまう

それはそうだろう、長年思い続けた相手に想いを伝えるのだ

だれだって緊張してしまうだろう


藤原「その……わ、私とけ…」


勇気を振り絞って声を出したのに鳳凰院様の声によって遮られた


校長「藤原さん…いや、瑠奈ちゃんはそれで本当にいいの?」


まだ何も言ってないのに全てを見透かしたようなセリフ


藤原「それでも何も…私は昔からほうお…隼人お兄ちゃんの事がっ!!」


校長「確かにそうだ、君は昔から僕を慕ってくれていた。でもそれは本当に恋心かい?それとも家族から貰えない愛情を僕に見ていただけじゃないのかい?」


なんで…なんでそこまで言われないといけないのだろう、私は…私は…


校長「僕も陰陽師の名家の生まれだ。自分の使命、やるべき事は分かってる。僕には好きな人がいるけどその人結婚する為なら重婚でもなんでもする。でもそれは側室となった人達を蔑ろにするって意味じゃない、僕の事を本気で想ってくれてる人ならきっといい家庭を作れると思うから…」


あぁ、この人には見抜かれてる


校長「瑠奈ちゃん、君が本当に僕の事を想ってくれているなら応えるよ。でも今、君の胸の中にいるのは僕じゃないだろ?」


分かっていた、知っていた

これが恋心では無いことは


ではどれだ?

それも分かっていた

一目惚れに近かった

入学式の日あの笑顔を見た時だ


でもそれは自分には叶わない恋だと知っていた

私が藤原である限り叶わないと分かっていた

それでもどんどん気持ちが膨らんだ

彼の事を知る度、惹かれていった


藤原「すみ…ません」


校長「大丈夫、僕は「隼人お兄ちゃん」だからね。君の家には上手いこと言っておくよ、だから瑠奈ちゃん彼を助けてあげて」

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