幕間ー藤原瑠奈
校内選抜大会
私にはあまりいい思い出がない
1年目は実力不足、経験不足を叩き付けられ
2年目、真装を身に付け絶対勝てると思ったら決勝で負けた
でもどちらも私を大きく成長させてくれた
そしていつも私より上には
私の最高の友達。
めちゃくちゃ気が合うとか、心が通じ合ってるとかそう言う訳では無い
ただ互いに尊敬して高め合える存在
良きライバル、学友
今回の全国大会はそんな私の最高の友達がいつもの様に予想外の手段を沢山使って無双するんだと思っていた
もしかすると去年、私のお兄様を追い詰めたあの早乙女くんにだって…
そんな事を考えていた
私は今、夢を見ているのだろうか?
「まずいっ!!藤原!武本!なるべく俺の近くにっ!障壁を張れるだけ張れっ!!」
彼は急に叫んだ
意味は分からなかったが従うべきだと感じた
武本くんもそうだろう
そしたら空が黒色に覆われた
それは私たちを襲う雨となった
身体中傷だらけになって、血塗れになった
それでも私は今生きている
すごいやあんた、本当に流石だね
少しでもあんたの声が遅かったら皆死んでた
私の霊力センサーじゃあ全体を把握出来ないし今の状況ではあまり効果を発揮しない
だから周囲を見渡した
凄惨…よく事故現場などを報道する時にこういう言葉が使われる
私は今日、本当に凄惨とはどういう物かと言うのを思い知らされた
鉄の匂いが辺りを覆い尽くす
そこら中が真っ赤に染まっている
陰陽師とはそういうものだと教えられてきたし、ある程度の耐性はあったつもりだ
それでも吐き気を催した
あいつはどんな反応をしているのだろう?ふと顔を見た
別人かと思った
それ程に見た事がない顔をしていた
そんな顔のまま近くの死体に近寄っていった
手を合わせるのだろうか?
誰かに踏まれないよう移動するのだろうか?
あろう事か、抱き抱え声をかけ始めた
見てられなくなった武本くんが肩を掴んだ
「なぁ、武本。この人おかしいんだ、まだ霊力があるのに動かないんだよ」
そりゃあそうだろう
死んだからといってすぐに霊力がなくなる訳では無い
そんなのは怪異だけだ
死んだ陰陽師の体からは、生前の霊力量は関係なく1日かけて霊力が抜けていく
そんな事、陰陽師にとっては当たり前の…
そこでやっと気付いた
彼がこの世界にやってきて誰かの生き死に触れたのは初めてだったのだ
彼はほんの2年前まで普通の世界で生きてきたのだ
心のどこかで彼は天才で、なんでも出来て、怖いものもなくて、どんな困難にも立ち向かう
物語の主人公のような人間だと思っていた
陰陽師になるべくして生まれた人間だと思っていた
でも彼はただの少年だったのだ
皆より少し努力が上手な普通の少年だったのだ
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