第122話

※この話には過激な表現を用いている箇所があります

グロ耐性のない方は御遠慮下さい


―――――――――――――――



3つの反応が溜めていた霊力を解き放つ

それは小さく散らばり、まるで雨のように会場中に降り注いだ


俺たち3人は寄り添い固まった

2人が上に向け障壁を貼り、その上から俺がバリアを何重にも重ね掛けする


敵の攻撃がバリアに触れる

まるで雨のようだと思えたそれは黒い棘だった

1つ1つはかなり小さいのにその威力は霊弾よりも強い

1つ当たればバリアに亀裂が入り、もう1つ当たれば破壊される


何百、何千もの棘が降り注ぐ

俺1人だったらとっくに穴だらけにされていただろう、3人でバリアと障壁を全速力で張り続けてようやく均衡が保てている状況


だが障壁は平面かつ自分1人を守る事を目的としたもの、3人を完全に守る事は出来ず肩や腕、足に防ぎきれなかった棘が刺さる


思わず声を出しそうになる鈍い痛みだがそれ所ではない、誰かが少しでもミスした瞬間に3人とも死ぬのだ



…何分経っただろうか?ようやく空を黒く染めていた棘の雨が止まった


安心した瞬間アドレナリンによって鈍くなっていた痛みが押し寄せる

棘は何かに刺さると消える為、刺さった棘を抜くという拷問は避けられたが3人とも身体中血だらけだった


何にせよ2人が無事でよかった…


そう。2人無事だった

俺は人が、いや陰陽師が死ぬとどうなるか?というのを知らなかった


周りには霊力の反応が多数あった、この会場にいるのは選抜大会を勝ち抜いた実力者達だ

きっと上手いこと対応したのだろう

陰陽会からも強そうな人達が来ていたし、敵ももう捕まってるんじゃないか?


ふと周りを見渡す

さっきまで隣には少し空いて背の高い男子が立っていた

その彼は今、床に倒れ身体中が穴だらけで血溜まりを作っていた


「なぁ、おい!起きろよ」


だが彼にはまだ霊力がある

現実を受け止められない俺は、生きているはずだと思い込んだ


藤原「ちょっ!?何して」


「なぁ!イタズラはやめろって!!」


声を掛けながら体を揺らす

血が付いたって関係ない

こんな冗談、笑えないって…


「なぁ…返事してくれよ」


武本「やめろ…」


俺の肩を武本が掴む


「なぁ、武本。この人おかしいんだ、まだ霊力があるのに動かないんだよ」


武本「やめろ!!」


「ほんと悪い冗談だよな…早く起きてくれって!!」


武本「やめろって言ってんだろ!!」


武本の拳が俺の頬に当たる

あぁ、痛ぇ。夢じゃない


本当は分かってる

この人は死んでる

でもそれを認めてしまったら、今この会場で生きてる人間が殆どいない事になってしまうじゃないか?


だってそこで倒れてる藤森あのひと、さっきまで俺と話してたんだぞ?

この大会が終わったらサポート生の女の子に告白するって照れながら言ってたんだぞ?


なぁ?おかしいだろ?

俺って強くなったんじゃないのか?

人ってこんなあっさり死んじゃうのか?


なんで、なんで、なんで?

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