第94話

陰陽術の授業中、珍しく担任がやってきた

だがその表情は決して楽しい報告をするものではないとすぐに分かった


――中村が怪我をした


その言葉を聞いた俺は気付いたら走り出していた


理由なんて聞かなくても分かる…

今日中村は1年のサポートとして陰陽術の授業に行く予定だったのだ

1年に悪い噂があったがコミュ力がある中村なら上手く打ち解けられるだろう

そう判断した担任が1番手として任命した

俺達も適任だと思ったし、中村も嫌がる様子はなかった


嫌な予感はしていたのに何故俺が行かなかったのか?

そんな罪悪感と申し訳なさで頭がいっぱいだった


保健室に着いた

扉を開けるのに躊躇してしまう

どれくらいの怪我をしたんだろうか?

起きてるだろうか?寝てるだろうか?

そんな事が頭の中をグルグルと回る


このまま待っていても仕方ない!!

ええい!なるようになれ!!


焦っていた俺はノックをせずに勢いよくドアを開けた


………


そこには上がキャミソール姿の中村が怪我の手当を受けていた


「すいませんでした!!」


俺は生まれて初めて土下座をした

人は申し訳なさが極限に達すると自ら土下座をしてしまうんだな…ということを俺は学んだ


中村「別にいいって!そんな謝んないでよキャミくらいで(それにまーくんになら見られたって…)」


最後の方はよく聞こえなかったけど許してくれるみたいだ

ギャルはあれくらいでは気にしないのか?

あれかビッチってやつか!


それでも俺は許して貰う訳にはいかない


「そっちもだけど、1番手行かせた事も…怪我までしてるし」


中村「なんでその事でまーくんが謝るんよ。皆で話して決めたじゃん!私だってこういう事も想定しとくべきだったんだから…」


「だとしても!だよ、俺は嫌な予感がしてたんだ。それなら1番手は俺が行くべきだった」


中村「嫌な予感って!笑。もーどんだけ真面目なんよ(そういう所も好きだけど…)それに怪我って言ったってちょっとカスっただけだし」


不幸中の幸い、中村の怪我は軽かった

左肩に切り傷が少しだけ跡も残らないくらいだと保健医は言っていた

さっきは制服を着たままだと手当が出来ないから脱いでいたらしい


「いや中村は女の子なんだから…」


中村(キュン♡あー!もうその困ってる顔も可愛いし優し過ぎてやばい!!もっと好きにさせてどうするつもり!?)


中村は一息ついた


中村「じゃ、じゃあデー…」


「次は俺が行くから」


見事に被った

デーってなんだ?分からん


中村「そっか」


「おう」


中村「じゃああの悪ガキ達を懲らしめといてくれる?」


「任せろ」


中村「ふふっ、ならお仕置が済んだら私のお願い1つ聞いてくれる?」


「俺に出来ることなら…」


そう言うと中村は笑顔になった

可愛いな…

それに俺に負い目を感じさせないようにお願い聞いてって、中村って良い奴だったんだな


最後にキャミソール姿を見てしまった事をもう一度謝り保健室を後にした


校庭に戻ると何故か皆がニヤニヤしていた

…解せぬ

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