全国大会編ー閑話
俺の名前は
1年前まで「早乙女家の失敗作」と呼ばれていた男だ
陰陽師の世界は霊力量が全て
さらに名家になればなるほどその流れは顕著となる
勿論俺の家もそうだ
だから霊力量が少ない俺は家の中でいないも同然の存在として扱われてきた
逆に霊力量が中級だった兄は可愛がられ、持て囃された
別にそんな事はどうでもいいし親や兄を恨んではいない
世間体という物があるんだろう
でも母は父と兄に隠れて俺に優しくしてくれた
でも俺は昔から陰陽師が好きだった、陰陽術が好きだった
何でただの人間からあんな凄い物が出てくるのか?
どうしてあんなに格好良いのだろうか?
多種多様な陰陽術を使う父や兄に憧れ、俺もそうなりたいと思った
だからこそ俺の霊力量が少ないと知った時は絶望した
そんな俺に使えるのは陰陽基礎術くらい
霊装すら霊力の垂れ流しになる為一瞬しか使えないという有様
でも俺はめげなかった
諦めたくなかった…
だから陰陽術の研究をした
ありとあらゆる陰陽術について勉強し、霊力に代用出来るものが無いか調べた
そんな俺を父や兄は気味悪がった
でもやはり母は協力してくれた
そして俺はある仮説にたどり着いた
人によって違うのは霊力を溜めておける器みたいなものの大きさだけじゃないのか?と
ならばそれを強制的にその器を大きくする事が出来れば霊力量が増えるんじゃないか?
そこからまた研究を進めた
そしてようやく準備が整ったのが去年の話である
極限まで体力を消費し爆発的な霊力を発動させれば今の小さい器を破壊し、新しく大きい器が出来る
確信はなかったが50パーくらいの可能性はあった
一歩間違えれば死ぬ危険さえある
だが俺は怖くない
このまま陰陽術を使えないまま生きていく方が辛いから…
結果、俺は死んだ(正確には死にかけた)
仮説自体の方向性は間違ってなかったがやり方が強引過ぎた
なにせ中学生の子供の考えた事だったから…
なら今いる俺は誰なのか?
間違いなく早乙女琉生そのものである
ただ俺は死んだ事によって思い出したのだ
俺は1000年前に安倍晴明の手によって殺された5人の陰陽師の1人「
死の淵をさ迷うことで宗玄の記憶が蘇った
宗玄は周囲の霊力を扱う事に長けていたのでその辺りの霊力を取り込み枯渇状態から抜け出す事でなんとか生還した
宗玄と琉生が混ざり合い俺は生まれ変わったのだ
1000年前は霊力量を増やすのなんて当たり前の事だったからすぐに増やそうと思った
だが色んな知識が衰退しているこの世界なら霊力が少ないままでも無双出来るんじゃないか?
そう考えた俺は今までの琉生に対する態度への意趣返しも含めしばらく霊力を増やすのはやめた
高校へ入り陰陽術を使ってみせるとすぐに俺に対する周囲の反応は変わった
家からは本来早乙女家の頭首となる物に付く従者が兄の所から俺の所へ来た
それが伊集院である
しばらくすると安倍晴明の生まれ変わりじゃないか?と言われはじめた
正直言うと胸糞悪い
霊力量が少ないまま無双するというのは概ね叶ったが日々惰性で過ごしていた
いつ霊力量を増やそうか?
そんな俺に転機が訪れた
どうやら学生陰陽師の最強を決める大会があるらしい
おあつらえ向きな舞台じゃないか!
無双するには丁度いい
この大会の後、霊力量を増やすとしよう
それに…
もしかすると俺と同じ様に転生している仲間がいるかもしれない
――そして迎える全国大会…
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