第92話

藤原兄の双剣が振り下ろされる…


そう思った次の瞬間

早乙女ではなく、藤原兄が倒れた


何があったかというと…

攻撃しようとする時、大体の人間は無防備になる

攻撃する事に意識が集中して自分が攻撃される事を想定していない

特に今のように相手を追い詰めたと思っている状況ではそれが顕著だった

そこへここまで1度も使っていない予備動作なしでのステルス霊弾

早乙女はそれを藤原兄の後頭部へと直撃させた


無防備な状態でいきなり後頭部へ攻撃を喰らえば簡単に倒されてしまう

とは言っても所詮霊弾なので霊装展開していれる藤原兄にはそこまでダメージはないだろう

だが急な衝撃に頭が理解出来ず、一時的なパニック状態へと陥る


…はずだった


藤原兄「完全に失念していた。俺もまだまだだな」


何事も無かったかのように立ち上がり、尚且つ自分に起きた事を正しく理解していた

やはりこの人も化け物なのだ


藤原兄「格好なんてつけてる場合じゃないな…」


早乙女「ははっ!まじかよ、面白過ぎるだろ」


藤原兄は自分の周囲に魔力を垂れ流し擬似的な霊力センサーを作り出した

これはかなりの荒業

荒業だが恐ろしく難しい

恐らくこんな事が出来る陰陽師は数える程しかいないんじゃないだろうか?


なぜ難しいのか?

そもそも大量の霊力を垂れ流しながら戦えるほどの霊力量がない

仮に霊力量が無限だとしても自分の周囲限定とは言え垂れ流している膨大な量の霊力を把握する霊力コントロールが必要となる

さらには戦いながらそれらを意識する為の集中力を保たないといけない


俺には到底真似出来ない

難易度だけで言えば霊力センサーの何倍も上

まずやろうと考える発想力がすごい

それに思い付いたとして決勝戦でいきなりやろうとなんて思わない

それをいとも簡単にやって退ける実力…流石としか言いようがない


対する早乙女は興奮冷めやらぬと言った様子(やっぱこいつ気持ち悪いな…)

わざわざステルス霊弾対策を取ってきた相手にテストと言わんばかりにステルス霊弾を放つ


藤原兄の霊力センサーもどきは自身を中心に半径3mほど

多少心許ない気もするがそんなの関係ない

圧倒的な身体能力と手数で全てのステルス霊弾に霊弾をぶつけて撃ち落とした


ここからはハイレベルな攻防が繰り広げられる

ステルス霊弾というアドバンテージを失った早乙女が不利かと思われたがそんな事はなく、逆に少しだが藤原兄を上回っていた


上回っているのに勝負が付かないのは決定打がないから?

はたまた遊んでいるのか…


藤原兄「はぁ…お前、早乙女つったか?確かに強いよ、想像以上だ」


藤原兄は急に動きを止め霊装を解除した


早乙女「え?もう終わり?そんな訳ないよね」


藤原兄「安心しろ、これで終わりだ。これから先俺がお前に勝つ事はないだろう、でも今日だけは勝たせてもらう。俺のプライドにかけて…」


そう言うと足を肩幅ほど開き目を閉じて手を合掌した


霊装もなく詠唱もしていないのにとんでもない量の霊力が吹き出す

そしてそれは藤原兄の周辺に留まりとんでもない密度の霊力となっていく


何をするかは分からないがかなりの大技だということは分かる


早乙女バトルジャンキーがこんなのを見たらどんな表情をしているんだろうか?


早乙女「……降参する」


まさかの一言だった

全国大会決勝戦は優勝候補の藤原兄が1年生に圧倒されるという波乱の展開で始まり、早乙女の降参という波乱の終わりを告げた


その場で理由は告げられなかったが後日「あの攻撃を防ぐ手段はなかった。悔しかったが来年リベンジしたい」というコメントが発表されたらしい


それで世間的?(陰陽会的?)には一応納得され、最後の表情も悔しそうだった!とか1年なのに凄い実力でこれから楽しみ!など早乙女に対し好意的な意見が多かった


でも俺には最後の早乙女の表情は遊んでいる玩具を取り上げられる子供のような表情に見えた



―――――――――――――――


※お詫び


通常、閑話は章の最終話と同時掲載をしてきましたが今回は執筆が間に合わなかったので2日後の9月1日に掲載となります


なお本編の第93話は9月3日からの掲載となります

閑話の登場人物は早乙女琉生となっています

本編に繋がる内容も少しありますので見て頂けたら幸いです


閑話なんか読んでねぇよ!!

本編載せろや!ボケが!!

という読者の方には大変申し訳なく思いますがどうかご容赦くださいm(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る