第60話

「もういい」


苛立ちを抑えながら呟く


鬼龍院「クソっ!何でだ!何で避けられる!俺の消失霊弾インビジブルショットが!!誰にも避けられない俺の最強の技だぞ!!」


「グフッ」


結構苛立っていたのに思わず吹き出してしまった

だって自分の技にインビジブルショットだなんて名前を付けてるとは思わないだろ

もはやここまでくると哀れ


こんな奴を必要以上に警戒していた自分に苛立ちを覚える


鬼龍院が自信を持っているインビジブルショット(笑)だが、要は見えない霊弾

でも見えなくとも霊力は込められている訳で、霊力センサーが使える俺にしてみれば普通の霊弾と何ら変わりない

何なら目を瞑ってても避けられる


真装っていうからどれだけ凄いのかと思ったけどそれっぽいのは見た目だけで正直ガッカリだ


「先輩、終わりにしましょうか」


鬼龍院「ふざけるなふざけるな!!何で俺がお前なんかに!!絶対認めねぇ!!!!」


真装発動と連続攻撃で異常なほどあった霊力も底をつきかけている

その残り少ない霊力をギリギリまで使って最後の攻撃を仕掛けてくる


鬼龍院「くたばれぇぇぇぇ!!」


2つの銃口から絶え間なく放たれる霊弾

その数はゆうに100を超える


この中に特殊な霊弾がある可能性は極めて低い

それでも最大限の警戒とここまでメッキを剥がしてしまった申し訳なさに免じて本気で対応する


霊装展開…


先程までの部分展開と違い、全身から力が湧き上がる


展開と同時に現れたなんの取り柄もない剣に霊力を込める

剣の刃の部分だけ青い霊力のオーラを纏う

これは部分展開の習得中に出来るようになった副産物


1回殴ると消える集撃や撃ったら終わりの霊弾と違ってコスパがかなり良い

しかもこんなことも出来る

オーラの部分が伸びる

これで霊弾を全て…斬る


皆からこの光景はどう見えてるんだろうか

俺が何も無いところを空振りしてるように映るんだろうか…

そんな事を考えながら最後の霊弾を斬った


そのまま鬼龍院の背後へ移動

剣を首に肩に置き


「お疲れ様でした」


鬼龍院「化け物かよ」


俺からしたらあんたの霊力量の方が化け物だよ

それに…ゆっくりと武本の方を見る

パチリと目が合う

今にも襲いかかってきそうな殺気を俺に放っていた



――こうして2回戦の最終戦は優勝候補が負けるという大波乱の中、幕を閉じた


ここで1つ真装について補足をしておこうと思う

察しのいい読者なら分かっているかも知れないが、鬼龍院が使ったのは真装ではない


そもそも真装の最低条件は、霊装展開の霊力変換率が10割なのだ

せいぜい5割が限界の鬼龍院が使える訳がない

ではあれはなんなのか?

正式名称は「霊装展開・蛮化ばんか

詠唱は真装と同じだが発動条件は特にない

その代わり真装の必要霊力の10倍消費し、真装の能力の1/10が使えるというもの

今回で言うと不完全なステルス霊弾、これが恩恵だ


もし鬼龍院が本当に真装を使えていたら、阿部は手も足も出なかっただろう

しかも鬼龍院はステルス霊弾という対学生において最強とも呼べる物を手に入れてしまったが為に修行を怠っていた

それが1番の敗因だろう

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