第44話

俺は陰陽高校へと進学した

まさかの人物に驚いた

藤原瑠奈…


藤原と言えば、言わずと知れた総家の人間

たしか京都周辺だったはず、なんでそんな奴が…

俺の高校生活は出鼻をくじかれた

今は勝てないかもしれない

だから3年かけて藤原を越えようと誓った


同じクラスにもう1人気に食わない奴がいた

素人…阿部正晴

つい先日まで一般人だったというそいつ

陰陽師は小さい頃から学び、特訓してきた者達ばかり

ぽっと出の、しかものうのうと生きてきた一般人なんかが陰陽師になろうなんてちゃんちゃらおかしい


案の定、素人は躓いていた

霊力すらまともに扱えない

何故こんな奴が入学出来たのか?

早く辞めさせたらいいのに…

というか自分から辞めろよ


そんな俺の思いとは裏腹に奴は辞めなかった

それどころか藤原や黒川、杉山と仲良くなっていた

なんであんな奴と仲良く出来るのか?神経を疑う


そんな時、事件が起きた

後に「陰陽高校岡山支部襲撃事件」と称されるそれだ

あの時は流石に死を覚悟した

そして藤原、素人、黒川がいない事に気付いた

俺たちですら5人でギリギリだった

奴らは3人、しかも1人は戦力外だ

確実に死んだと思った

俺のライバルと嫌いな奴が同時にいなくなった

これでなんの憂いもなくやっていける

そう思っていた…


それなのに奴らは生きていた、しかもその日から素人は霊力を扱えるようになった

無性に腹が立った

たまたま入学して、たまたま誰かに助けられ、たまたま霊力が使えるようになる


俺の苦労はなんだったのだ?と

この頃から阿部に対する感情は怒りへと変わっていった


そして「あの日」だ

一生忘れられないかも知らない

それ程の屈辱だった


そんな時、奴がやってきた

(俺の夏休み編―閑話参照)


もらった日の夜、試しに薬を飲んでみた

身体中から霊力が湧き上がってきて、何でも出来そうだと思った

頭の中が空っぽになって、全てがどうでも良くなった

そして素人に対する怒りだけが俺の脳を支配した


夏休み中にもう一度だけ薬を飲んだ

飲んだ状態で戦う時用に身体を慣らす為だ


そしたらどこがで見ていたかのように黒ローブがやってきた

何も言わず薬を5錠渡してどこかへ消えた


そうこうしていたら二学期が始まった

校内選抜大会…そこで俺はあの素人をボコボコにすると決めた

そして二学期最初の陰陽術の授業、担任はなかなか興味深い事を言っていた


俺は試す為に薬を飲んで特訓した

すると30分くらいしたら頭が真っ白になった

それからの記憶がないが、恐らく眠っていたんだろう


二学期が始まって2週間くらい経った

素人が登校しなくなった

担任は短期留学とか言っていたが、ビビって逃げんじゃないのか?

それならそれで俺は優勝すればいいだけだ


最終調整でもう一度薬を飲んだ

すぐに頭が真っ白になった

何故かもう1錠薬がなくなっていた

服の肩甲骨あたりが破れていたが特に気にしなくていいだろう


翌日、2年の担任が怪異に襲われ大怪我を負ったという話を朝のHRでされた

一学期に続きまたしても…結界があるはずなのにほんとに治安が悪いな、この学校

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