第43話

俺の名前は武本宗次郎そうじろう

陰陽高校岡山支部に通う1年だ

俺はごく普通の家庭に産まれ…てはいない


それを説明する前に陰陽師の”家格”について説明しておこう

陰陽師の家格は大きく分けて4つ

藤原の家や校長の鳳凰院、3年の鬼龍院等の古くから陰陽師として活躍してきた家は”総家”と呼ばれ陰陽会のトップとして君臨している

それ以外で、過去5世帯以内に中級以上の陰陽師を輩出した家は”本家”と呼ばれる

過去3世帯以内に下級以上の陰陽師を輩出した家は”新家”と呼ばれる

それら3つを引っ括めて”名家”と呼ばれ、それ以外はただの一般陰陽師の家


陰陽会は血の結び付きを重視している

その為、名家には様々な特権が与えられている

まず金銭面の特権

新家には年間1000万

本家には年間2000万

総家は噂でしか知らないが年間5000万だか、1億だか、兎に角とんでもない額が与えられるらしい


次に結婚

家格が上の家は下の家に対して問答無用で結婚させることが出来る

優秀な者同士を結婚させるのが目的の為、自分より1個下のランクから上の陰陽師としか結婚は出来ない、等の細かい条件はあるがとんでもない特権と言える

このせいで名家では恋愛結婚などほとんど無い

ちなみに特例が存在する

それは超級以上の陰陽師だ

彼らの1個下のランクと言ってもそもそも相手がいない可能性がある

その為、彼らにはランク制限なしでの結婚が許される。その代わり重婚が許可され、陰陽会からは推奨される

そこまでして高ランク陰陽師の血を残したいのか?と思ってしまうが、それほど貴重な存在なので仕方ないとも思う


最後に、家ではなく下級以上の陰陽師の特権だが国内に限り交通費完全無料となっている

これは怪異討伐で日本中飛び回る事が多いからだ

ちなみにプライベートな事で移動する場合も適用される


特権の内容を見てもらえば分かるだろうが、並級と下級、一般と新家では雲泥の差があるのだ

(正確には霊力だけでなく活動内容も加味して審査される)


俺の家は新家である

ずっと一般陰陽師だったが3年前曾祖父さんが突如下級陰陽師として活躍した事で新家に昇格した

だが祖父も父さんも並級陰陽師、今年下級陰陽師を輩出する事が出来なければ降格してしまう

父さんも母さんも今更一般家庭の生活など送れない!と慌てた


俺には4つ年上の兄がいる

兄の霊力は並級だった

それでも成果を挙げさえすれば下級陰陽師に成れるかもしれない

そんな両親の欲望の為だけに厳しく育てられた

そんな時、俺が産まれた

腐っても名家なので霊力測定器を持っている

俺の霊力量を見て両親は歓喜した

兄にしていた教育は全て俺へと向けられ

兄はまるでいなかったかのように扱われた

そして兄は部屋に引き篭った


俺は兄の事は嫌いではない

というより殆ど会話もした事がないのだ

俺の家での記憶は、

『お前がこの家を救うのだ!』

『頑張りなさい!宗次郎だけが頼りなの』

『お前はエリートなのだ!』

『強くなりなさい!』

こういった両親の言葉ばかり


ただ霊力が下級であるだけではいけない

岡山なんて田舎の支部校、俺は当然のように頂点を取らないといけないのだ

それが両親の望みだから…

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