第42話

またダメだった…


山村さんの顔を見るのが怖い


呆れただろうか?憐れむだろうか?

それとも素質がないから諦めろと諭されるだろうか?

どれにせよ、俺に対していい思いは抱いていないだろう


山村「周子が連れてくるだけあっておもしろいなお前」


は?

思ってた反応と違う

一体何がおもしろいと言うんだ


山村「正晴はこの4月から陰陽術を使い始めたんだっけ?」


「はい…そうですけど」


今その質問になんの意味があるのだろう


山村「何でそんな事になってんだろうな!全くもっておもしれーよ」


バカにするような感じではなく、本当に面白いと思ってるのが伝わってくる


「何がそんなにっ!」


悪意はなくても馬鹿にされている気になる

俺が叫び切る前に遮られた


山村「集撃を使えるようにしてやろう!方法は2つ。1つは時間が掛かるが痛みはない。もう1つはすぐ終わるが少し痛い。どうする?」


そんなの…


「痛い方で…」


決まってるだろ

俺には時間がない


山村「え、もしかして正晴って…M?」


「はっ?そんな訳ないでしょ!なんで」


山村「いや、痛い方って言うから…」


凄い人なんだろうけどそれが外見からは伝わってこない

担任とはベクトルが違うけど適当な感じが似てる


山村「ま、いいや。じゃあやるよ」


山村さんが近付いて来て背中のどこかを触る


「がああああぁぁぁぁ!!」


その直後激しい痛みが背中を襲う


「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ!」


神経を傷付けられたような痛みがドンッときてそこから頭痛みたいな痛みが背中から身体中に広がっていく


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


痛いから地面に倒れのたうち回る

すると地面にふれた所の痛みが増す


山村「長くても1日だから頑張れよ!」


そんな言葉など聞こえるはずもなく俺は叫び続けた

そんな痛いなら我慢してじっと動かないようにしていればいいだろ?と思うかもしれない

普通に無理

ただの頭痛ですら結構な痛みなのにそれが全身なのだ

想像すら出来ないと思う

頭は割れそうで腕は取れそう、体は裂けそうで足はちぎれそう

そんな痛みが一気に押し寄せる

痛みで気絶しそうになるが、他の痛みで目が覚める

声を出していないと頭がおかしくなりそう

動いてないと死ぬんじゃないかと思ってしまう


「あ゙ぁ……あ゙」


ついに声が枯れて出なくなってきた


もう嫌だ

痛いのは嫌だ

手も足もいらない

誰かこの痛みから助けてくれ…


いっその事死んでしまえば…



極限状態の俺を救ったのは、山村さんでも他の誰かでもなく、心身共に限界を迎えて訪れた気絶だった


そして俺は短い眠りにつく

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