第41話

おっさん「じゃあ今日から宜しくな!荷物は小屋に置いてきてくれ」


「……」


おっさん「??荷物ないのか?これから1ヶ月くらい一緒に住むんだから…」


「え……」


おっさん「え…もしかして聞いてない?てかなんも持ってきてねぇのか…」


コクン


俺は胸の中に湧き上がる怒りを必死に押さえつけながら頷いた


おっさん「かー!あいつほんとそういうとこあるんだよなぁ…まぁしょーがねぇか!」


おっさんはガッハッハッと笑うが俺は全然笑える精神状態ではなかった


荷物とかは最悪置いとこう、でも1ヶ月て何?住むって何?

通うとかじゃねぇの?

わやじゃが…

学校は?勉強は?てか出席日数足りる?


仮に選抜大会で優勝しても退学じゃね?

わやくそじゃが…


あまりの事にキャパオーバーした俺は天を仰ぐ

左目から少し何かが零れた気がする


おっさん「おーい!大丈夫か?」


ふぅ…


深呼吸を3回する

少し冷静になれた

ここから学校に戻る方法は分からない

それに戻った所で選抜大会では勝てないだろう…


ならもう腹を括るしかねぇ

勉強は死ぬ気でやれば追い付けるはず

出席日数は…まぁいいや

最悪留年でもなんでもしてやる

今ここで逃げる理由にはなんねぇよ


「大丈夫です」


俺の顔を見たおっさんはニヤッとした


「うん。なら小屋に道着があるからそれに着替えて来てくれ、服はそれしかないんだろ?」


「はい!」


言われるままに小屋へと向かう

小屋には布団が1組と棚と机があるだけだった

棚にはサイズが様々な道着がキレイに並べてあった

失礼ながらもっと汚いのを想像していたから驚いた


自分に合うサイズの道着を着ておっさんの元へと戻った


おっさん「ふむ。少々着せられてる感はあるが似合うじゃないか!」


道着に似合うとか似合わないとかあるんだろうか?

…いや、あるか

それより…


「あのなんてお呼びしたら…」


いつまでもおっさんと呼ぶ訳にはいかないしこのままでは心の中だけじゃなくて普通におっさんと言ってしまいそう


おっさん「あぁ、そいやぁ名乗ってなかったな。俺の名前は山村やまむら翔平しょうへいだ!勿論師匠って呼んでくれてもいいけどな」


「俺は阿部正晴っていいます。お願いします山村さん」


なんとなくだが師匠と呼ぶのは嫌だった


山村「じゃあさっそくだが集撃を見せてくれ」


「ッ!」


悪意があったりわざとやってる訳ではないだろうが、俺の散々な現状を見られて失望されるのが怖い


霊装展開し右拳を握る

チラリと反応をみたが無詠唱程度では驚いていないようだ

霊力を右拳に…

いつもより集中する

間違いでもいいから今回だけでも成功して欲しいっ!


少しずつ右拳に霊力が集まっていく


………


俺の願いも虚しく霊力は霧散して霊装も解除された

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