第33話

藤原「な、何よそんなに見て!もしかして私に見惚れたの?」


「うん、見惚れた。めちゃくちゃ綺麗」


藤原「んなっ!もう!うるさい!バカっ!!」


照れてるんだろうか?言われ慣れてると思ったけどそうでもないんだろうか?


杉山「いや、正晴プレイボーイかよ」


黒川「流石にそれはすげーよ」


「えっ」


素直に思ったから綺麗と言っただけなのに2人にまで驚かれてる…なんでだよ!


その後は泳いだり、スイカ割りをしたり、ビーチバレーをしたりして遊んだ


海に来たの自体、小学生ぶりでこんなに遊んだのは今日が初めて

これだけでこの夏休みは俺にとって特別なものになった


一足先に着替えた俺は部屋へと戻ってきた


ガチャ


扉を開くとそこには、着替え中の桜井がいた


桜井「…」


「…」


俺は何も言わずに扉を閉じた


数秒したら慌てて着替えたのであろう桜井が飛び出してきた


桜井「見た?」


「…」


桜井「見たよね?」


「はい…見ました」


まさか桜井に女物用下着を付ける趣味があったなんて…

水着の時に感じたエロさは桜井から溢れ出る女性ホルモンのせいだったのだろうか?

確かにこんな趣味があったら一緒に着替えるのは恥ずかしい訳だ…


桜井「頼める立場じゃないのは分かってるけど、皆には内緒にして欲しいんだ」


「そもそもなんでそんな事してるんだ?」


桜井「詳しくは言えない」


趣味じゃないのか…?

まさか複雑な事情が


「他に知ってる奴は?」


桜井「校長先生くらいかな。もしかすると担任の先生も…」


え?なんで女性用下着の事を校長が?

それほどに複雑な事情なのか…


桜井「黙っててくれるなら僕の事…好きにしても…いいから…」


何故だか桜井が涙目になりながらそんな事を言ってくる

こいつの顔よく見ると可愛いな


「いやいやいくら何でも男にどうこうなんて…」


桜井「は?」


桜井は何故か顔を赤くしながら震えている


「え?」


桜井「君はあの姿を見てまだ、僕の事を男だと思っていたのかい?」


先程までの可愛い顔は消えまるで鬼のような表情になる

ようやく俺は理解した。

桜井は女性用下着を付ける趣味ではなく、本当に女性なのだと…

胸がないからって男だと早計に判断した俺が悪かったのだ


バチーン!!


俺の左頬に強烈なビンタが炸裂した

その後きちんと謝罪し、どうして男装しているのかという説明を聞いた


でもこのまま同じ部屋で過ごす訳にもいかないしこれからの学校生活で困る事もあるだろう

女子にも味方が必要だと思い

藤原にも話すよう説得した


最初は渋っていた桜井だったがなんとか承諾してくれた


藤原は適当な理由をつけて桜井の個室も用意してくれた

3人で話し合った結果、桜井が困った時は助けようという事になり、Vineのグループで「桜井守り隊」という物が作られた


それにしてもまさか桜井がアイドルをやっていたとは驚いた

ハルカ?かハルキ?か知らないが何処かで聞いた覚えがあるんだよな…


その答えを俺が知るのはもう少し後の話だった

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