第23話

――昨日。校長室



隼人に呼び出された私は校長室にいた


校長「どう思う?」


担任「何が?」


こいつは頭がいいくせに他の人も同じ事を考えてるだろ?くらいの勢いで会話するから何も伝わらない事が多い


校長「んー?最近の校内の雰囲気だよ」


担任「危険だな」


校長「だよね。そう思って行動しようと思うんだ」


最近の校内は事件の事を忘れて油断しきっているから危険

という前半部分を省略しているのに会話が成立する

隼人と会話すると楽だが怖い


校長「僕が居なくなると奴らは行動すると思わないかい?だから偽の出張で相手に行動を起こさせる」


ここで言う”奴ら”とは先日の事件を起こした犯人の事

私は全くもって想像が付かないが”奴”ではなく”奴ら”と言ったのだから隼人にはある程度目星が付いているんだろう


担任「いいんじゃないか?」


校長「ほんとに?1番危険なのは1年生達だよ?それに僕がいないなら君には校外を見回って貰うことになる」


担任「それは仕方ないだろう」


この学校にいる陰陽師は私達を含め7人

養護教員に2年の担任、3年の担任、教頭、生徒指導の5人だ

皆霊力は中級なのでそれなりの陰陽師だが、こんな田舎の学校に配置される程度なので戦闘能力で言うと隼人の次に強いのは私なのだ

私は陰陽会から嫌われており、実力も評価されていないのでこんな所に配置されている


陰陽会が重視する事は、

①一般人へ被害を出さない事

②一般人に怪異の存在を知られない事

③一般人に陰陽師の存在を知られない事

の3点である


本音を言うならば、顔も知らない一般人より自分のクラスの生徒達の方が何倍も大事だ

でも仮に一般人への被害を放って、生徒達を救ったなどという事が陰陽会にバレれば陰陽師として活動する事は出来なくなる

それだけならいいが、最悪の場合命を奪われる


それほど陰陽会というのは”絶対”なのだ


陰陽高校の周りには陰陽会が張った巨大な結界があるが、今回の敵は隼人の結界を怪異に通り抜けさせている

万が一の可能性を考えて結界の境目を調査しないといけない


今回封印されていた赤鬼は2体、青鬼は50体

それらが全て1年に襲いかかったとしても、すぐに他の学年や先生が助けてくれるはず

だから私が居なくても大丈夫


校長「君がそう言ってくれるなら安心して作戦を決行出来るよ」


担任「元より私にはお前の決断を否定出来るはずないだろ」


隼人は私以上に考えた結果、この作戦をやろうと言ったはず

なら私が多少考えたくらいでそれを覆せる訳がないのだ

だからこれはただの確認作業


校長「そんな事ないって」



――翌日



日中はいつもと同じように授業を行った

特段異常もなく進んだ

隼人が出張に行ったとしてもすぐに行動を起こすというのは確率的には低いだろう

だが、万が一という事がある


陰陽術の授業を終えた私はすぐ見回りに行くことにした、何かがあった訳ではないが、嫌な気配を感じたのだ

勘と言われればそれまで、でも私はその勘に従った

結果は最悪の形で的中した


私が見回りを開始した直後、学校の辺りで怪異の気配を察知した

すぐにでも学校に戻りたかったが、見回りをせずに戻る事は私には出来なかった


全力で見回りを済ませた

結界には異常もなく怪異もいなかった

そこでようやく犯人の狙いが絞られた

隼人が不在の時に生徒を襲わせる事で隼人に責任を負わせようとしているのだと


だが、気付いた時にはもう遅い

生徒達の無事を祈りながら全力で学校に向かう事しか出来なかった


学校に着いた私は絶望した

怪異の反応が50どころでは無かったからだ


なぜそんな簡単な事に考えが及ばなかったのだろう

田舎とは言え陰陽高校を襲撃するのに赤鬼2体と青鬼50体で足りる訳がないのだ

それなのに襲撃するという事は、よっぽどのアホか成功する算段があるということ


少し考えれば分かったはずだ…

なのに他の学年や先生が助けてくれるから大丈夫だなんて、私も油断していたのだろう

でも少し違和感を感じるのはあの隼人がそこまで考えてなかったのか?という事

でも今更言っても仕方ない


私は全力で1年の教室へと向かった

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