第21話

自分の無力さを突きつけられるなんていう場面は人生において何回あるのだろうか?

普通の人が一生のうちに遭遇するか分からないそんな場面の1回目が今まさにやってきた所だ


あれから約30分藤原がずっと戦い続けている

囲まれた状態では戦えないとすぐに守りの薄い所を一点突破


壁を背にして少しでも死角を減らす作戦を決行、まさに背水の陣である

俺はただただ藤原が青鬼を倒す様を見続けていた

黒川の武器は小回りがきかないので打ち漏らしを倒す役として俺と一緒いるが何もしていない

きっと俺以上に無力感に苛まれているんだろう事が表情から伝わる


確かに藤原は凄い

でも30分戦い続けているのだ、集中力も欠けて来ているし疲れも見える

時期に限界が来るのは目に見えている

なんとかして力になりたい

でも俺にはその力がない…


藤原「クッソ!黒川!ごめん頼む」


黒川「よっしゃ!任せろ!!」


そうこうしていたらついに打ち漏らしが出た

でも一体だけなので黒川は難なく倒す


まだいけるだろうか?などと思っていたら藤原が体勢を崩した!

近くまで来ていた青鬼が一体、藤原目掛けて襲いかかる


気付いた時には走り出していた


ドガッ!!


俺は全力で青鬼に体当たりをした


藤原「大人しくしてろって!言ったじゃない!!!!」


俺は体当たりするだけで精一杯で背後に迫りくる青鬼に全く気付いていなかった


バギョ!!


「え…?」


背後で骨が砕けたような音がした

藤原はどこだ?


辺りを見回す


「藤原ああぁぁぁ!!」


藤原は俺を庇って青鬼の攻撃をモロに食らい壁に激突していた


黒川「あべちゃん!危ねぇ!!周り見…ゴフォッ」


俺を助けに来ようとした黒川も青鬼に吹き飛ばされた


俺が余計な事をしたからか…?

なんでこうなる

ただ…ただ俺は皆と青春したかっただけなのに…


周りには数え切れない数の青鬼

2人とも気を失っている

このままだと全員もれなく共倒れだ

俺のせいで!


目の前で起こった事への恐怖で足が震える

死ぬのが怖いのか?俺


生き残る可能性はほぼ0

なら少しでも2人の生存確率を上げるべきだろ

自分の失態、取り返せなくてもやれるだけやれよ

震えても足動かせ!!


俺はなるべく2人から距離を取り叫ぶ


「こっち来い!!クソ鬼共!!雑魚だから群がってんのかぁ?あぁ!?」


俺に注目させて2人から引き離す!!

全力で走れ!足が折れても走れ!

青鬼達がもうすぐ後ろまで来ているのが分かる


どれくらい走っただろうか?

心臓が痛いし足も痛い

限界が近い…

2人を助けられただろうか?


そこで俺の意識は途絶えた



――1年教室



こちらも戦闘が始まって約30分経とうとしていた


花村「おらぁぁぁっしゃーい!!」


ドアから入ろうとする青鬼達を狂化した花村が盾で抑える

抑えきれない所を中心に杉山と中村が遠距離攻撃をする


慣れた手つきで行うそれはまるで作業のようになっていた

とは言え1歩間違えば全滅する可能性がある間違っても手を抜ける場面ではない、それ故に杉山と中村は極限の集中状態に入っていた

青鬼一体を倒す為に、杉山のナイフは2発。中村のボールは3発必要、中村の方が霊力の消耗が激しかった


対する武本と桜井コンビは、桜井が青鬼の体勢を崩し武本がとどめを刺すと言った息のあったコンビネーションでなんとか拮抗を保っていた


両方なんとか堪えてはいるがいつ均衡が破れてもおかしくない状態

むしろ30分も持った事の方が奇跡だった


中村「ごめん…もう…無理」


極限の集中状態のせいで霊力を枯渇寸前まで使ってしまった中村がついに限界を迎えた


花村「なああぁぁぁぁろおおぉぉぉぉ!!」


花村が残った力を振り絞り青鬼を押し返すが健闘むなしく隙間から青鬼が侵入してくる


武本「くそがぁ!!」


侵入してくる数は花村のお陰で多くない

武本が限界以上の動きを見せ、侵入してきた青鬼を倒しながら桜井が体勢を崩した青鬼も倒す


まさに武本無双

だがそんな無理が長く続く訳もなくすぐにバテてしまう


不意に力が抜けた武本は何も無い所で躓く


武本「ああぁぁぁ!僕はこんな所で死ぬ訳にはいかないんだああぁぁぁ!」


武本の叫びは教室になだれ込んで来た青鬼の声に掻き消された

もうおしまいだ

皆、死を覚悟した…

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