第20話

あれから1ヶ月経った

山本先輩の件以来怪異による被害は出ておらず、赤鬼と青鬼を見たという報告すらない


山本先輩も完全に治って学校へと復帰しているみたいだ

複雑骨折が1ヶ月で治るなんて普通では考えられないけど、普通に納得してる自分がいる

陰陽師の回復力がすごいのか?はたまたすごい治療法があるのだろうか?


最初は厳戒態勢と言わんばかりに皆ピリピリしていたが今となっては何事も無かったかのように過ごしている


赤鬼と青鬼も見付かっていないし、なによりそいつらを逃がしたであろう人物も捕まっていないのにあまりにも油断し過ぎである


それは教師陣も同じだった

この状況で校長が出張に出かけた

結界自体は放っておいても1ヶ月は持つが、問題はそこではない


校内を守る最強の陰陽師が不在となるのだ、犯人からすれば襲ってくださいの合図と変わりない

勿論、犯人がその好機を見逃す筈もなく…



俺はあまりにも進歩がないので放課後校庭で特訓?をするようになった


黒川と杉山も自分の練習をやると言いながら付き添ってくれて

ここ最近は藤原も残るようになった


今日はたまたま杉山が用事でいなかったので3人で居残り特訓をしていた


「あーもーだめじゃー。全然どーにもならん」


黒川「そんな焦ってもしゃーないって!俺らだって全然進歩しとらんし、なぁ?藤原」


いつもならここでうるさいわねー!!とでも言いそうだが珍しく無言だ


藤原「ヤバいわよ!黒川っ!さっさと霊装解放!!阿部を安全な所に移動するか先生呼んできなさい!!かしこみかしこみ申す。霊装展開!!」


急に藤原が慌てて霊装展開をする

俺には何も感じられない


黒川「何だってんだよ?一体何が起きてるんだ?かしこみかしこみ申す。霊装展開!」


黒川もよく分かってなかったようだが霊装展開する

手には両手斧が握られていた


藤原「だぁー!!もう駄目よ囲まれたわ。誰か来るって奇跡を信じて耐えるしかないわね」


藤原が頭を抱えると校庭を囲むように青鬼の大群が現れた


黒川「いや…ヤバすぎん?わやくそじゃが…」


黒川は焦り過ぎて岡山弁のフルコースになってる

でも正直気持ちは分かる

どう考えてもここから生還出来るビジョンが浮かばない



――同刻。1年教室


帰宅しようと皆帰る準備をしていた



武本「おいっ!全員霊装展開しろ!速く!僕は先生を呼んで…クソっ!!かしこみかしこみ申す。霊装展開」


いち早く異変に気付いた武本が霊装展開する

武本の手には薙刀が握られている


杉山「一体何があったか言うてくれんと皆混乱するって!どしたんよ?」


杉山が慌てて武本を宥めにかかる


武本「このヤバさを感じ取れないのか!!死ぬぞ!!早くしろ!!」


それでも武本は止まらず、どころか激しく怒鳴った

流石に皆驚いて渋々霊装展開した

花村は盾、杉山はナイフ、桜井は長杖、中村の手にはボール?のよう物が現れた


武本「花村さん!盾で相手が入ってこないように押さえて!」


花村「うおぉっしゃあぁぁ!!」


花村は何故か霊装展開した事によってキャラが変わってしまった


武本「中村さんは補充型の遠距離攻撃用だよね?杉山はそれ補充型か?」


中村「そっ、そうよ!でもそんなに威力はないわよ」

杉山「補充型だ」


霊装には常時展開型―普通の武器になる物と補充型―中村や杉山のように投げたりしても霊力を補充する事で再度使用可能になる物がある

常時展開型も破壊された場合などには霊力を補充すれば再度使用可能にはなるが、消費霊力が尋常ではない


武本「ドアが破壊されるまでは各自待機!片方は花村さんと中村さんと杉山で対応してくれ!もう片方は俺と桜井で対応する!」


気配が近付き足音が鳴り響く

皆ようやく武本が言っていた事がなんだったのか理解した

文字通り死ぬかもしれない戦いが近付く

皆の緊張は最高潮まで上った



校長が出張に向かっていなくなった日の放課後、狙ったように校内全てで青鬼による進軍が始まった

1年の教室には青鬼のみだが、2年や3年、教師陣の元には赤鬼が何体も現れた

まるで誰がどこにいるか分かった上で各場所に適した戦力を分散させているような動きであった

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