第14話

貧乏故に今までそういった描写を目にする機会が無かった

普通ならゾンビゲームやホラーゲーム?映画や漫画、アニメで見る機会があるのかもしれない


でもただひたすらに勉強をしてきた俺には、怪異とは言え人の形をしたモノの首が切り落とされる

その光景は計り知れないショックを俺に与えた


殺した?

そりゃ怪異だけど…そんな簡単に

嘘だろ?首が…

考えれば考えるほど頭の中がグチャグチャになる

気持ち悪い…

昼飯が逆流して口の中までやってくる


「オエッ!!オエッ……ゔぅ…オエッ!!」


見事に吐いてしまった


不幸中の幸いだったのは怪異は霊力の塊なので血飛沫をあげることが無かった事

仮に血飛沫をあげていたら完全にトラウマになっていたと思う


他の皆も驚いていたり目を覆う者はいたが吐くほど酷かったのは俺だけだった


「カハッ…オエッ……オエッ!」


吐き出すものが無くなっても気持ち悪いのは収まらないので嗚咽が止まらない


黒川「あべちゃん大丈夫か?」


ある程度収まって来た所で黒川と杉山が駆け寄って背中をさすってくれた


「皆は平気なん…だな…俺あんなわやなの初めて…見た…ゔっ……」


※わや…めちゃくちゃ、すごいという意味の岡山弁


杉山「初めて見たって嘘やろ?その方がわやじゃが」


育ったのは温室じゃなくて寧ろゴミ山なんだけどな…

とそんな冗談を言う気力すらない


山本「阿部少年は体調を崩したようだがこの程度は陰陽師を志すものなら当たり前の光景だぞ。なんなら人間がこれよりもっと酷い状態にされてしまう事も多々ある。この程度は耐性付けとけよ」


そう言われてハッとする

俺はどこか浮ついていたのかもしれない

ある日急に自分が浮世離れした世界へ連れてこられて、まるで自分がアニメやゲーム(見た事ないけど)の主人公にでもなったような気がしていた


でもこれは紛れもない現実なのだ

陰陽術も現実のもので、怪異も実際に存在している

陰陽師達は文字通り命を懸けて戦っているのだ

浮ついた気持ちで陰陽師を目指すなんて思ってはいけなかった

早い段階で気付けたのはよかったと思おう


その後も山本先輩による授業は続いた

うちの担任よりよっぽど先生らしかった


山本先輩は青鬼をまるで雑魚のように言っていたが、それはあくまで陰陽師基準の話

一般人にとってはその攻撃力は脅威である

パンチは120キロで走るトラックがぶつかるくらいの威力で蹴りはその倍

噛み付かれるとそこは骨諸共引きちぎられてしまう

体のどこかを掴まれてしまったら、逃げる事は出来ず骨を粉々に砕かれる

油断すれば陰陽師でもダメージを食らうだろう


さらに厄介なのはもう1種類の小鬼

赤鬼と呼ばれるそれは、見た目はほとんど青鬼と同じだが名前の通り体が赤く角が2本ある

身体も青鬼より一回り大きく身体能力はほぼ3倍

なにより厄介なのが頭が良いと言う点

赤鬼は青鬼の群れのリーダーである事が多く、赤鬼に率いられている青鬼の群れは通常の奴と違い武器や戦術、罠を使ってくる


怪異も霊力と同じようにランク分けされていて青鬼は並級で赤鬼は中級に分類される

でも赤鬼が青鬼を率いる場合において青鬼は下級に格上げされる


補足だが最強の怪異「羅刹」は勿論、伝説級に分類される


ちなみに怪異のランク分類は並級だけは例外だが、下級怪異を倒す為には下級陰陽師が5人必要とされている

上級怪異であれば、上級陰陽師が5人必要


とはいっても陰陽師も霊力によるランクだけでは分類出来ない部分もあるのであくまでそれくらいの強さと考える為の目安である


なんとか授業は乗り切ったが気持ち悪いのは変わらないので急いで寮へと帰って眠りについた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る