入学編

第1話

桜舞う季節

真新しい制服に身を包み、中学校の同級生達と再会を喜び

新しい仲間との出会いに思いを馳せる


そう!

俺は今年から高校生!!


両親から私立だけはやめてくれと言われ続けて早3年…

猛勉強の末、掴み取った公立高校の切符


その中でも進学校として県内でもトップクラスの県立青龍高校に受かった俺は今日、入学式を迎える


さぁ、門を通れば俺も晴れて青龍生だ!


門を越える最後の一歩を踏み出した…

その瞬間、目の前が真っ暗になった


真っ暗になったと思ったら揺れる

静かになって揺れも収まったと思ったら今度は車の音がする


まさか…誘拐?


俺みたいな一般家庭の男子高校生を誘拐した所でなにがあるんだ…

腕は後ろで縛られ身体をデカい布かなんかで包まれている

ちょっと暑いし水分補給したい


こういう時って恐怖でパニックになると思ってたけど意外とそうでもない

暫く車で移動するっぽいし暇なので自己紹介でもしようと思う

俺の名前は阿部あべ 正晴まさはる15歳、今年から華のDK(男子高校生)

岡山県岡山市生まれ岡山市育ちの生粋の岡山県民

自分が岡山県民である事に誇りはない

何故なら方言が汚いから

ぼっけぇだのでぇれぇだのとやたらと濁点の多い方言

ネタになるほど面白くないし、特徴的な訳でもない

なにより有名ではないのだ!

岡山の方言女子と京都の方言女子、どっちが可愛いかと言ったら完全に京都だろう

岡山県のいい所なんて台風があまり来ない事くらいだ


っと岡山ディスしてたら揺れが収まった


布の隙間から光が漏れ出てくる

眩しい


ようやく布を取ってくれるらしい

久しぶりに見た外は山奥だった


いやいやいやいや普通に怖い

これから何が始まるんだ

何でこんなところで外に出された


周りを見ると黒いスーツを着てサングラスをしている”いかにも”な連中が立っていた


??「これに着替えてください」


スーツ軍団の中にいた背の低い人が服を投げてきた

声からすると女性だろうか


「いや!おかしいだろ!いきなり誘拐したくせになんの説明もなし?ありえねぇ」


女性「はぁ…」


スーツの女性が溜息をつく

溜息をつきたいのはこっちなのだが


女性「何故校長はこんなクズを…」


「おい無視してんなよ!警察に言っても良いんだぞ」


スーツの女性から威圧感が放たれる

殺気?怒り?なんだこれ

恐怖で身体が動かない

死を覚悟すると身体が硬直するというが、こういう事なのかもしれない


女性「この程度で…本当にクズね。貴方たち着替えられないそうだから手伝ってあげて」


俺は黒いスーツのガタイがいい男達に揉みくちゃにされながら着替えさせられた

15にもなって人に着替えさせられるなんて経験はなかなかない

それこそ箱入り令嬢くらいだろう

俺は男として何か大事な物を失った気がした


女性「貴方のようなクズがその制服に袖を通せる事を感謝するのね」


…と言われても

見た感じ普通のどこにでもありそうな制服

上は白いブレザーで、下は紺のズボン

白いのは少々驚いたがそれだけ

この制服にそこまでの価値があると思えない


そのままスーツ軍団に囲まれながら移動する

本来ならもっと抵抗してなんとか逃げるべきだったのだが、殺される気配もないし主犯?の女性の残念オーラのせいで有耶無耶になってしまった


スーツ軍団の足が止まる


女性「こっちよ」


俺を囲んでいた黒いスーツ達がバラバラに散った

女性が指を指し先導する

だが俺には目の前の建物の事が気になって仕方ない


女性「何してるの!早く来なさい」


「いや、これ何?」


女性「見て分からないの?学校よ!本当にクズね!!早く来なさい」


そう、目の前にある建物はどこからどう見ても学校なのだ

ちょっと前からおかしいなとは思っていた

何故拉致られたのに制服を着せられたのか?

そういう趣味のご婦人に売られるのか?

とも考えた


でも違った

制服を着て、学校に来た

つまり俺はこの学校へと入学させられるのだろう


全くもって理解出来ない

何がどうなったらそうなる?


俺の青龍高校の入学はどうなった?

こんな高校受験してないのになんで入学出来る?

てかなんで山奥に学校がある?

そもそもなんて高校だよここ!

親は知ってるのか?

通学はどうすればいい?

毎日あれで通学すんのか?


分からん。分からん。分からん。分からん。

イライラしてきた


俺は走りだした

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