第15話【貴族籍の特別特待生】

「フローラ・フォン・カリオスト、貴女をハーツ学院貴族籍の首席特別特待生にて合格とする」


 カリオスト子爵家にハーツ学院から合格通知が届いた。それを見たダグラムは腰を抜かさんばかりに驚いたそうだ。


 その頃、無事に依頼を達成した僕はホッと一息ついて久しぶりにゆっくりと寝ていたが寮長からの言葉に絶句していた。


 ――カリオスト子爵当主様からの呼び出しだ、すぐに屋敷に向かうように。


 屋敷に着いた僕はすぐに応接室に通されてダグラムが来るのを待った。


(やばいな。なにかヘマでもやったかな?でも依頼の条件はフローラ嬢をハーツ学院に合格させることだけだったよな?)


 僕が不安にかられているとダグラムとフローラ嬢が入ってきたので立ち上がり礼をした。


「お呼びだそうで……。何かございましたでしょうか?」


 褒められて追加のボーナスを……。とは行かないようだ、何やらダグラムの顔色が悪い。対してフローラ嬢の顔色はすこぶる良好だった。


「あー。この度は娘の学院入学試験対応、ご苦労だった。おかげで無事に合格する事ができた。感謝している」


(やはり合格の礼か? それにしては様子がおかしい。なにか問題でもあったのか?)


「ありがとうございます。ですが、全てお嬢様の努力の賜物にてございます」


 ダグラムの様子がいつもと違うので迂闊な発言は避け、無難な答えを返す。


「うむ。それは良かったのだがひとつ問題があってな」


 ダグラムは横に座るフローラ嬢をちらちら見ながら話を進める。


「今回の試験時に起こった事件により娘は一躍学年首席の生徒になった。それは喜ばしい事なんだが娘が首席を取った褒美に2つお願いをしてきたのだ」


「2つのお願いですか?」


「うむ。ひとつは学院に通いだしてからもおぬしに家庭教師をして貰いたいそうなのだ。学年首席となると同学年には成績が下ばかりで学院に通う意義がないとまで言い出す始末でな」


「その事につきましては学院を通して依頼をして頂くしかお受けする方法はありません。僕はお嬢様と違って平民の特別特待生ですので代わりに授業料を出してくれる方々の依頼を引き受けているので、こちらを僕の判断で引き受けてしまうと別の依頼があった際に身動きがとれなくなってしまいますので」


 僕は丁寧に説明して正規の手順でとお願いした。


「うむ、分かった。この件に関しては明日にでも学院長に話しておこう」


「ありがとうございます。それでもうひとつの問題とは何でしょうか?」


 僕は嫌な予感しかしないが、聞かなければ話が進まないのは分かっていた為に思い切って聞いた。

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