第2話【与えられた依頼内容】

 僕はとりあえず渡された依頼書に目を通すと次の瞬間、僕の思考が止まり何度も依頼書を読み返した。


 そこに書かれていた事は……。


【フローラ子爵令嬢の家庭教師を務めること。詳細は別紙にて確認すること】


(何だこの依頼内容は? 僕はこの学院にこの春入学したばかりでまだ12歳だし、そんな僕に家庭教師を頼むなんて……)


 依頼書を両手に持ったまま、何度も繰り返して見る僕に事務長のアランドが声をかけてくれた。


「アリオン君は今回が初めての依頼になるのでしたね。依頼内容に戸惑うかもしれないが決して不可能な依頼は出さないのがうちのやり方だから心配しなくていい。まずは別紙の方もよく読んで君が最適解だと思うやり方を考えるといいだろう」 


 アランドの言葉に僕はもう一枚の紙をあわてて確認する。そこには依頼の具体的な内容が書かれていた。


◇依頼内容:カリオスト子爵家令嬢のフローラ嬢の家庭教師を行う。


◇対象者詳細:カリオスト子爵家の長女。現在11歳で来年春に当学院を受験する予定だが学力はギリギリ及第点。しかし実技が合格基準点に達しておらず優秀な家庭教師を探している。


◇依頼期限:来年の受験合格まで。


◇依頼報酬:成功報酬で家庭教師の学院授業料の肩代わりをする。なお、失敗した際は無報酬とする。


(なるほど。来年受験する貴族令嬢の家庭教師をして学院に合格させればいいのか。まあ、特待生合格させろとかじゃなければ何とかなるだろう。学力はそこそこあるようだし……)


 依頼書を読み終わると僕はアランドにいくつかの質問をした。


「家庭教師とありますが、学院生ではない方の場合は『時間』とか『何処どこで』とかはどうなるのでしょうか?」


「君担当の子爵令嬢はこの学院から徒歩で10分程度の場所にある子爵家王都邸に住んでいるはずです。時間的には学院の授業が終了してから子爵邸に向かう事になるでしょう。君は学院の寮に住んでいるが依頼主の子爵家が邸宅に住み込む事を望んだ場合、学院に報告すればそのようにして構わないです」


「分かりました。それでは今日にもお屋敷を訪問してみたいのですが先方への連絡はどうすれば良いのですか?」


「普通は自分で使いの者を手配するのですけれど君は初めてなので学院から連絡を入れておきます。では今日の授業が終わったら先方へ伺い、契約内容の確認をしておいてください」


 アランドはそう言うと子爵家宛の手紙を書いて部屋の隅に控えていた者に手渡し「それでは頑張ってください」と言い残して部屋を出て行った。

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