僕に家庭教師を頼むなんて…いまさら文句を言っても遅いですよ貴方のご令嬢はチート娘になりましたから

夢幻の翼

第1話【アリオン・メビウス】

 ――コンコン。


「アリオン・メビウス入ります」


 アイシクル王国の王都にあるハーツ学院の学院長室では数人の生徒が学院長に呼ばれて集まっていた。


「君で最後だ早く入りなさい。学院長からお話があるので皆とそちらの椅子にて少し待っているように」


 事務長のアランドがその場に呼ばれた数人の生徒達を席に誘導し、学院長が来るのを待つ。


 ――かちゃり。


 僕達が入ったドアとは反対側のドアが開き学院長が入ってくる。学院長など学院に入学した時に挨拶で見たくらいで一生徒としては接点さえ無い人物で僕達の間に緊張感が走った。


「皆よく集まってくれた。今日ここに集まってもらったメンバーはこの学院に通う『特別特待生』の資格を持つ者達だ」


 ――この学院は12歳〜18歳までの子供達が通う学院で勉学の他に貴族に必要な教育や魔法の使い方から護身用の剣術まであらゆる分野で王都一のレベルと実績を誇る伝統ある学院である。


 国内の住民であれば年齢さえ達していれば誰でも受験出来るとあたかも誰にでも門は開かれていると謳っているのだが、実際は高度の知識が必要なのと授業料が高額な事もあって小さい頃から英才教育を施している貴族の子息が主な生徒だった。


 しかし、学院長の方針で学院のレベルと世論の向上のために平民から優秀な生徒を特別特待生として授業料免除にて入学させていたが授業料免除の対価として彼等は学院長からの依頼をこなす事が義務づけられていた。


「君達の中には既に何度か依頼をこなして貰った者達も居るが初めてこの場に来た者達も居るので改めて契約内容を話そう」


 学院長が何枚かの資料を机に広げてひとつずつ説明していく。特別特待生として試験に受かった際に説明された内容と同じ事を淡々と説明し、最後に皆に言った。


「では、これが今回の依頼書になる。上級生から順番に取りに来るように」


 もう何度も依頼をこなしているのだろう、上級生達は次々と学院長から依頼書を受け取ると書かれている依頼内容にホッとする者や青い顔をする者など様々だった。


「では最後にアリオン、依頼書を受け取るように。君は今回が初めての依頼なので不明点があれば事務長のアランドに聞くがいい。この依頼料は君達の授業料と相殺となっているので依頼が未達成の場合は授業料の請求か退学かになるのでしっかりとこなすように」


「「「「「はい」」」」」


 その後、依頼書を受け取った者達は逃げるように学院長室から自らの部屋に戻っていった。

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