決行

 数週間後、俺たちは今夜決行することを決めた。


 夜になると、俺たちはまずあの箱が入っていた床下に入り込む。

 そこから通路になってるという情報は正しく、俺たちは通路を真っ直ぐ通った。床下に空間がどの部屋にでもあって、そこを伝えば脱出できるらしいが、ちょっと信じられなかった。


 端まで行くと、そこに子供一人分くらいの雑な穴が空けられていて、そこから下に降りられるみたいだった。



 かなり下に降りて、小さい通路に着いた。俺たちがちょうど通れるくらいの大きさだった。


 網目状の蓋がはめ込まれているところがあり、そこから下を見下ろすことができる。


 木葉留によれば、下には数人の大人がいるらしい。



「ここからどうする?」

「ここからは下に降りて突破するしかないよ」

「そうだな……木葉留、どう?」

「このフロアはそんなにいない。璃杏、いけそう?」

「わかんない……でも、やるしかないよね」

「ここから一気に行こう」


 俺たちはうなずき合った。そしてその網を突き破り、下に降りた。


 その瞬間、銃弾が飛び交った。俺は銃弾の気配を感じ、それを全て水に変えた。


 そのうちに紫音と木葉留は次のフロアに向かった。


 そのあとも同じように打開し、1階までたどり着いた。ただ、1階はやけに人が多かった。


 俺が前に出て、後ろに紫音と木葉留が隠れる。


 そしてリーダーみたいな奴が前に出てきて、璃杏に話しかける。


「なぜお前らは能力に気付き、ここまでやってきた」

「お前らに関係ないだろ」


 俺はそれらしい答えで返す。


「じゃあ聞き方を変えよう。お前らは、なぜ脱出を試みた。脱出できるというその自信はどこから来ている」

「自信なんてない」

「は?」

「俺たちは誰かのために生まれた。そうだろ? 知らない誰かが助かるために、その研究のために生まれた。もしくは、その研究の果てに生まれた」

「まあ、そうだな」

「誰かのために生まれて、誰かのために死ぬ。そんなのおかしい。それならせめて、自分のために生きて、死にたい」

「そうか」


 そしてそいつは俺に銃口を突き付けてきた。


「いけ」


 そいつのその合図で、一斉に銃弾が放たれた。


 俺は全てを変化させようと思ったが、遠すぎるものは変えることができなかった。そしてそのうちの一発が紫音の足を貫いた。紫音はその場に倒れ込む。


「紫音……」

「璃杏、頼んだ」


 木葉留はそう言って紫音をおんぶした。


 俺は天井にひびをいれた。そして天井が落ちてきた。怪我はさせないで、足止めするくらいに抑えて、その隙に俺たちは出口から外に出た。



 そこから塀のところまで行って、塀にに小さな穴を空けた。その小さな穴を通って、俺たちは施設の外に出た。


 初めての外は、夜の暗闇に光るライトが眩しくて、綺麗だった。

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