第12話 NS《ニッケル·シューター》
キョウコの呼び声で現れたのは頭部は伝説の英雄、ロビンフッドの名を持つ帽子を模した形態で羽飾りに似た大きなアンテナが左側頭部を飾り、右肩は銃を固定するための爪が左肩は肩を覆うようなマント状の装甲が覆い、腰のブースターはクロムに比べるとかなり小型のもので代りに腰部左側面を覆うように装甲を纏た銀白の機体、
『いよう、久しぶりだな、NS』
クロムが懐かし気にニッケルに声をかけると、ニッケルはコテンと首を傾げる。
『ぼくとCKがあうのははじめてですよ』
ニッケルの言葉にクロムの赤い瞳が瞬いた。
『お前……何を言って…………』
嘘を言っているように見えないニッケルからクロムは視線をキョウコに移す。
『どういうことだキョウコ』
問われたキョウコは渋面を作ると暫く押し黙った。はあと大きく息を吐くとキョウコは話し始めた。
「私がニッケルの担当になった時からこの子はこうだったの。以前のこの子のことは私も知識として知ってる。この子がこうなったのは前の
言い終え、キョウコがニッケルの方を向くとニッケルはすっと歩み寄り片膝を付きキョウコに手を差し出す。差し出された手にキョコが乗ると静かにコックピットハッチが開きキョウコをその身に収めた。
『俺もそうなっていたかもしれないな』
「そうかもね」
『全部忘れたほうが幸せだったのかもな』
「かもね」
クロムの呟きにキョウコが相槌を入れる。
「でもね、やっぱり忘れられるのは寂しいかな」
『だよな』
キョウコの言葉に返したクロムの声はどこか安心したような響きがあった。
『あれこれ考えてもしょうがない。今は今出来ることを考えるだけだ。まあ、そういう訳だからユーミルまで俺とミィのこと頼んだぞキョウコ』
クロムの依頼にハッチの開かれたコックピットから顔を覗かせたキョウコはやれやれと苦笑いを浮べながら、
「はいはい。任されましたよ」
と返すとミィに笑いかけた。
「まあ、そういう訳だからユーミルまでよろしくねミィちゃん」
「はい。よろしくお願いします」
元気よく返事をするミィにキョウコは何か思い出したのかあっと小さく声を上げた。
「そうだ、ミィちゃんとクロム。MJのおかげでクロムの人格は消されないでいるけど、あれ、たぶんMJの独断だと思う。周りにクロムの人格が無事なのばれると面倒そうだから、クロムは自立AIじゃなくて戦術AIのふりしてて。で、ミィちゃんはクロムのパイロットってことでよろしくね」
キョウコの指示に不安げに「あたしに出来るかなぁ」と呟くミィに対してクロムは憮然としたような雰囲気を醸し出していた。
『何で俺が戦術AIの真似何か──』
「出来るよね」
ぶつくさ文句を零すクロムをキョウコの棘のある笑顔が刺す。
「出来るよね?」
再度の問いかけにクロムの方が折れた。
『了解しました。本機は戦術AIを模倣します』
「よくできました」
にっこり笑うキョウコを前に苦笑いを零すミィと深いため息を吐くクロムだった。
後日、キョウコが確認したところやはりデータ上ではクロムの自立AIは初期化されたことにされており、キョウコの推測が正しかったことが証明された。
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