第5話 そして女神は舞い降りた。

「ふぁ?」


 突然話せなくなった少年を訝しげに見下ろす。


「あわ、あわ」


「?」


 みるみるうちに顔を赤らめる少年。


「何だ?そなたはマスターではないのか?」


「あぁぁぁのぉぉお!こ、これ!!き、汚いけど無いよりマシだから!!その!」



 突然、自分の着ていたボロ服を脱いで私に差し出してきた。


「?」


 そして、自分が、真っ裸だったのを思い出したが、今更だったし、ボロ服は着たくなかったので誠意だけ受け取る事にした。



「済まないな。そなたの心意気はありがたい。だがそなたから奪う訳には参らん。気持ちだけ受け取るとしよう」



 私はそう言って翻り髪の毛をバサッと払い颯爽と台座を降りる。


 ふっ!決まったな。

 セイバーごっこ超楽しいんですけど!!


「なあァァァ!良いから受け取ってよぉぉぉ!!」


 気分良く決めたと言うのにこの小童はどうしてもこのボロ服を私に押し付けたいらしい。



 いくら何でもそんなボロ服は嫌だぞ?

 身体が痒くなりそうだ。



 全く、これだから衛生管理も出来ない世界の奴らは常識が、無くて困るのだ。


 私はその辺に転がっていた奴らの綺麗っぽいマントを引っペがして、1度赤外線消毒した後に何ヶ所か破りAラインドレスの様に纏った。


 それから髪の毛も手前で軽く三つ編みして最後にハンカチを失敬しつつコレも赤外線消毒して髪を纏めるリボンにした。


 ふむ、完璧だな。




「これで、問題なかろう?」



 小童がチラチラ見てきていたので、私はドヤ顔してそう宣言してやった。


 ◇

 ・

 ◇


「ふぁ?」


 そう言って彼女は僕をジロジロ見てくる。


「あわ、あわ」


「?」


 だけど、見ちゃいけないのに白くて滑らかな肌と年齢の割に良く膨らんだ双丘や蕾から目が離せない。


 だ、ダメだ!

 ダメだよ!


 頭に血が登る。

 ご主人様達は度々、女性を買い付けては夜の営みを行っておられた。


 僕は置物の様に何時も部屋に置かれその行為を見させられていた。

 それは、ご主人様が女性を乱暴に扱ってしまうのですぐに手当をする為だったし、偶にお亡くなりになる方を回収して埋める為だ。


 その度に何度も何度も行為を行う姿を見せられる。

 僕にだって性欲が無いわけじゃない。


 中には未成熟な、そう彼女のような方もご主人様は買ってこられた。


 そう言う女性達は何時も泣き叫んでいた。

 僕は何時も罪悪感と僕もしていまいたいと言う背徳感に苛まされていた。

 そんな時は耳と目を閉じてしまいたいのにご主人様達は僕にそれすらも許してくれなかった。


 何時も何時も……。


 それなのにこの目の前の彼女を、産まれたままの姿を見上げて僕の頭は破裂しそうだった。



「何だ?そなたはマスターではないのか?」



 彼女が何か話しかけてきたけれど僕はそれどころじゃない!



 こんな穢れも染みも無い彼女に手を掛けない内に!

 誤って彼女を襲って仕舞わない内に!



 僕は慌てて自分の着ていたボロ服を脱いで彼女に押し付ける。


「あぁぁぁのぉぉお!こ、これ!!き、汚いけど無いよりマシだから!!その!」




「?」


 首を傾げるその動きも整った目鼻立ちも僕の野生を掻き乱す。




 そう言えばと言った感じで彼女は自分が裸であることをようやく認識したようだ。

 良かったと安心した瞬間、彼女はニッコリ笑ってようやく受け取ってくれたボロ服をそっと僕へ投げ返す。



 僕は訳が分からず受け取ってまた彼女の素肌を眺めてしまった。



 そして、徐に彼女は何も隠すものは無いとばかりに両手を腰に付け語り出す。


「済まないな。そなたの心意気はありがたい。だがそなたから奪う訳には参らん。気持ちだけ受け取るとしよう」




 そう言って彼女は翻り髪の毛をバサッと払うとそこに未成熟な可愛いお尻がプリンッと僕の目の前に向けられ僕は我慢の限界に襲われる。


 そして、美しい裸体を惜しげも無く見せつけながら彼女は女神が舞い降りるが如く台座から舞い降りてきた。



 僕はその瞬間、もうダメだった。



 僕の我慢は切れた。

 プッチン切れた。

 もう無理だった。



 そして僕は本能のままに彼女に迫る。




「なあァァァ!良いから受け取ってよぉぉぉ!!」


 半泣き状態のまま、僕は彼女にボロ服を渡そうとすると彼女はお尻をぷりぷりさせながら転がっているご主人様の元へ行く。

 唐突にご主人様が纏っていたマントをご主人様から引っペがし1度拡げてパンッと鳴らす。

 すると熱風と共に何かが焼ける匂いがした。


 彼女はマントを何ヶ所か破り僕の目の前でくるりとマントを身体に纏わせると、まるで何処かのご令嬢のドレス姿の様に一瞬で着飾った。


 それから彼女は髪の毛を片側に下ろし緩く三つ編むとまたしてもご主人様のハンカチーフを取り出しパンッと音を立てるとそのまま髪に結、リボンにした。


「これで、問題なかろう?」


 そう言って笑う彼女はどう見ても僕と同じか年下なのだろうけど、それでも魅力的で思わず生唾を飲み込んでしまうくらい美しかった。



 それに、彼女のドレスが元々マントだったので足元から太ももどころか胸元まで深いスリットが入ってるみたいでチラチラと生足とか色々見えちゃイケナイ物が見えて凄く気になってしまう。


 そして、彼女は今、履いてない……のだ。



 頑張って考えないようにしていたのにやっぱり無理だった。

 先程見上げた時に見た彼女の産まれたままの姿が脳内で再び再生されて僕はまた茹でダコの様に顔の赤みを取ることは不可能になった。


 僕はそれを誤魔化すかの様に黙って彼女から渡されたまま持っていたボロ服を着たのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る