第4話 折角なのでセイバーごっこして見た。

 徐に台座から飛び降りペタペタと磨かれた大理石の床を裸足で歩く。


 磨き上げられた床に映る自分の姿を見て私は外に出る事に躊躇いを感じた。

 何故か私は真っ裸なのだ。


 4歳とはいえ私も流石に真っ裸で出歩くのは辛すぎる。

 と言うか


「何故だ!あのクソヤンデる女!お前と会話してた時は服着てただろうが!私の服返せ!!」


 改めて、あのクソヤンデる女に罵詈雑言を捲し立てるが反応は一切ない。



「あのクソ女、次に会ったらタダでは済まさんからな!倍返しだ!!」




 反応が無いのに叫んでも疲れるだけなので、改めて何か身体を隠せるものが無いかと周りをウロウロしてみる。

 みたが、あるのは磨かれた大理石の壁と床と台座のみ。



 ウロウロしてもなにもない。

 それはそうだ。

 見渡す限り何も無いのだ。

 超黒光りしてる大理石のみが存在感を醸し出している。



「はぁ〜」



 光源もないのに不思議と明るいホール。

 所謂、謎空間で私は仕方がないので真っ裸のままで台座に座り直す。


 今更だけど、幼子のお尻に優しくない硬さである。



 私は不貞腐れて勢い良くゴロンと寝転がった。

 考えれば当たり前だが私は良く磨かれた大理石の台座に頭を強かにぶつける。


「くぅ〜〜」



 ぶつけた頭を抱え言い様のない痛みとこの状況を作り出したあのヤンデる女に怒りを覚える。



「………ふぅ〜」


 が、諦めてそのまま寝る事にした。


「Zzz」


 何度か微睡みと現実を行ったり来たりしているとくぅーとお腹がなった。


「お腹すいたなり」


 このまま飢え死にするのだろうか?と悲嘆に暮れているといつの間にかまた眠りについていたようだ。



 気が付くと私は小さい石になっていた。




「………どうしろと!私にどうしろと!!」





 動けないので矢張りそのままふて寝した。



 ◇

 ・

 ・

 ◇



 ギギギガガガゴトーン!!



「こんな所に隠し扉とは、この遺跡はまだお宝がありそうだな」


「しかし、ここは何だ?大理石の部屋?」


「おい!ポーター!早く金目の物を探せ!」


「は、はい!」


「たく、さっさとしろ!役に立たん餓鬼だな!」


「おい!ポーター!余り荒らすなよ!考古学的な大発見があるかも知れんのだからな!」


「は、はい!ご主人様!」


 ポーターと呼ばれた6歳位のボロ服を纏った少年が大理石の台座にキョロキョロしながら近づく。


 しかし、台座の上には何も見つけられなかった。

 いや、同じ大理石の様な菱形の石があった。


 あったが前にクズ石だったものを持ち帰って主人に殴られた事を思い出し、1度手にしたものの元に戻して何も見つけられなかったと主人に報告する。


 バキッ!


「ぐガッ」


「もっとしっかり探さんか!役立たずが!」




 殴られても逆らう事は許されなかった。




「も、申し訳ごさいません。もう一度見てまいります」


 そう言って、台座と台座周りをもう一度調べ直すも何も見つけられなかった。




「何か見つかったか?」


「申し訳ごさいません。何も…」


「はぁ〜!本当に役に立たん」




「申し訳…」


 再び詫びようと頭をさげた時、突然、蹴り飛ばされ台座に身体を強かにぶつける。


「ぐぅ!!」


 余りの痛みに身体をすくめるが血が額から流れ落ちる。

 額を抑えると手に自分の血がベッタリとついた。




「ギャハハ!!余り玩具で遊び過ぎるなよ!すぐ壊れるのでなぁ!」


「ガハハ!確かになぁー!だが、壊れたならばまた新しいのを買えば良いだろう?」


「確かになぁー!ギャハハー!!」




 少年は唇を噛み締めつつも痛みを堪え台座を支えに使って立ち上がる。

 すると台座の上にあったあの菱形の石にまた触れた。




「少年、目を瞑れ」


「え?」




 触れた瞬間に突如、石は光だし、光源があるかの様な明るい部屋だったのにも関わらずその光は、光で光を上書きするかのように石から溢れ出て、まるでフラッシュが延々と続くかの様に眩しく輝き部屋中をその光で照らし続けた。



「ぎぃゃぁぁぁーーー!」


「目がぁー目がぁー!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」



 予想だにしない目眩しに笑っていた男達はモロに光を見て失明してしまう。

 そして、暴れまくっ挙句、すっ転んで大理石に後頭部をぶつけ2人仲良く旅立ってしまった。



 少年だけは警告されていたのもあり咄嗟に目を瞑り、更には台座の下に顔を隠した状態だった為、失明の危機を脱したのだった。





 ようやく光が収まると頭上から先程も聞こえてきた軽やかに踊る妖精の様な声がまたしても頭上から響く。



「問おう!そなたが私のマスターか?」





 突然の頭上からの声の問に少年は答えられなかった。

 何故ならその声の主を確認しようと見上げたそこには腕組みをした真っ裸の幼女が仁王立ちしていたからだ。








「ふぁ!!」






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