第2話 私はアレに異世界へ飛ばされました。

「何しらばっくれようとかしちゃってる訳!?巫山戯てる訳なの!?貴女!!」


 物凄い形相で間合いを詰めてくる般若女。


「いや、ごめん……マジで分からないんだぁ」


「はぁ!?何?私がそんなんに騙されるとか思ってる訳?馬鹿にするのも大概にしてよね!」


「いや、うん。…本気で…その、ごめんね」


 消沈しているとわなわなと身体を震わせつつ、更に詰め寄ってくる般若女。


「本当に……何言ってる…訳?」

 コワイコワイ!


 余りの恐怖に青ざめていると般若女も急に青ざめた顔になりヨロヨロと後ろに後ずさる元般若女。


「ホント二…ナニイッテルノ…」


 何故だか後ろめたさを感じたので、


「うん。その…さ、ちょっと私も分からない事だらけで詳しく説明して欲しいかな……って」

 妥協案を出してみる。


「う、嘘よね?そんなのって有りな訳?そんなの…そんなのって…あんまりだよ」



 遂にorz状態になってしまった元般若女がブツブツ独り言を言い始めた。


 ヤバい!もしかしなくても般若女がヤンデる女にジョブチェンジしてしまったのか!?

 先程よりも、異常に怖いのですけど…。




「そう!そうよね!多少のイレギュラーがあってもそんなの関係ないわよね!契約は契約なのよね!問題ないのよね!補完は出来る訳よね!ありがとうなのよ!」



 突然独り言を叫びだし、復活したと思ったら唐突に空を見上げて頑張りますポーズを決める元ヤンデる女。



「いい事!例え貴女の記憶が混乱してようと消えていようと契約上の効力は機能しているわ!だから貴女が何を思おうが結局の所、貴女が私の世界を救う事に違いはないの訳よ!だから貴女には私の世界に行って私の世界の巨悪を締め上げて正常な世界に戻してちょうだい!これは決定事項なの訳よ!」




「え、え〜と……ですから、さっきから情報をプリーズって言ってる…」




 ようやくまともにヤンデる女と対話が出来る様になり、私は私の事、私の元いた世界の事、この体がこの元ヤンデる女の作ったアバターである事、ダイレクトダイブとは要はこの体を使って元ヤンデる女の世界に行く為の手段である事、私はこのダイレクトダイブを既に2度程体験していて、今回は3度目である事、最初のダイレクトダイブをする契約条件が元の世界の妹と母の命を事故から救う事だった事、2度目は2度目の世界の家族全員に罹った不二の伝染病からの回復だった事、記憶障害が何故起きたか理由が一切分からない事、向こうの世界で私がアバターとのリンクを安定させれば記憶も戻る可能性がある事、等々を説明され、此方からの質問は一切受け付けずに、「行ってらっしゃい!!」とか言われて飛ばされた。


 こうして私はなし崩し的に元ヤンデる女の世界へと旅立つ事となった。





 めでたしめでたし。


「何が!めでたいかぁー!!」



 ちょっと待て!

 3度目の理由は?

 だいたいコレ終わったら元の世界に帰れるんだろうなぁ!


 それに今回の契約条件聞いてないぞ!こら!

 巨悪ってなんだよ!曖昧過ぎるだろ!

 どうすればクリアになるんだよ!


 おい!巫山戯んな!

 ヤンデる女!カムバーック!!

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