第24話

このままじゃあたしが悪者になって、スマホを奪われてしまうかもしれない。



「あたし見たんだからね」



そう言う音は自信満々な表情だ。



うそ。



どこで?



冬夜と会う時は地元はさけ、隣街まで移動していた。



デート中に音に会った事なんてないはずだ。



「なに? 動揺してるの?」



花瓶を片手ににじり寄ってくる音。



美世も、完全に音の後ろに付いている状態だ。



「あたしも、見たよ」



喉がカラカラに乾くのを感じながら、あたしはそう言った。



男に見せられた動画を思い出す。



美世の制服を盗んで、男子生徒に売っていた音。



「はぁ?」



「美世。中学の時に制服が無くなった事があったよね」



あたしは美世へ向けてそう言った。



美世は驚いた顔をこちらへ向けた。



「あった。でも、なんで?」



美世の質問に音はすでに焦っている。



必死で隠しているけれど、視線が定まっていない。



「美世の制服は盗まれたんだよ。音に」



あたしはそう言って音を指さした。



「え……?」



美世が音を見つめる。



「そ、そんなことない!」



音は焦り過ぎて声が裏返ってしまっている。



これでは罪を認めているようなものだった。



美世が音から離れた。



「違う! そんなことしてないから!」



「音は美世の体操服も盗んだんだよね?」



そう聞くと、音がサッと青ざめた。



「なんで……?」



美世の声が怒りで震えている。



「売ってたんだよ。男子生徒に」



「うるさい! 黙れ!」



音が叫び、あたしへ向けて花瓶を振り下ろして来た。



あたしは床を転がり、それを避けた。



花瓶は床にたたきつけられる。



「音の家って裕福じゃん。なんでそんなことすんの!」



美世が叫び、テーブルに置かれていたフォークを握りしめた。



「……いいじゃん別に。あんた男好きなんだから」



音が鼻で笑ってそう答えた。



その目には美世へ向けての軽蔑の眼差しが浮かんでいる。



「はぁ? なに言ってんの?」



「元々嫌いなんだよね、美世のこと。だからちょっとくらい困ればいいのにと思って」



開き直ったようにそう言う音。



美世の顔は見る見る赤くなっていく。



握りしめられたフォークが小さく震えている。



あたしは少し後ずさりをしてその様子を見つめた。



今優勢なのはどっちだろう。



あたしはどっちの味方をすれば勝てるだろう。



そう思い、壁に飾られていたナイフを握りしめた。



「ちょっとお金があるからって調子に乗ってんはあんたでしょ!?」



「お金は裏切らない。でもね、見た目は変わるんだよ?」

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