第14話
~音サイド~
全裸にされて写真を撮られるなんて、そんな屈辱的なことをされたのは初めての経験だった。
お金はあると言っているのにどうしてあんなことをされたのか理解できなかった。
相手はあたしに服を着せてから出て行ったから、乱暴目的でもなかったのだ。
本当に意味がわからない。
「お金がすべてだって言ってたくせに」
あたしはチッと舌打ちをしてそう呟いた。
祖父も両親もあたしをそう言って育てて来た。
愛情よりも金が大切だと。
お金があるから安心だと思っていたのに、大間違いだ。
あたしはこんな目に遭わされていい人間じゃないはずだ。
その時だった。
ドアが開き、覆面の男が食べ物を持って入って来た。
あたしは覆面の男を睨み付ける。
「お金じゃないならなにが欲しいの!?」
そう聞くが、覆面の男はテーブルの上に食べ物を置くとそのまま出て行ってしまった。
「返事くらいしろよ!」
怒鳴り声をあげ、足でテーブルを蹴り上げる。
それは壁へと激突してパンと牛乳が散らばっただけだった。
あたしは肩で呼吸を繰り返してドアを睨み付けた。
くそ!
なんでこんなことになったんだろう。
原因は親にあるとしか思えない。
あの人たちは金の世界だけで生きている。
きっと沢山の人たちから反感を買って生きて来たに違いない。
あたしはとばっちりだ!
雄たけびのような悲鳴を上げて壁を蹴る。
くそ!くそ!くそ!
両親が原因ならあたしにできる事なんてなにもない。
お金がいらないなら、復讐の材料として利用されるしかないじゃないか!
ギリッと奥歯を噛みしめた時、テーブルがぶつかった壁も向こうからドンッと低い音が聞こえて来た。
「え……?」
あたしは上半身を起こして壁を見つめた。
今の音は気のせいだろうか?
そう思っていると、また同じような音が聞こえて来た。
気のせいなんかじゃない!
ハッと息を飲んで壁へと近づいた。
自分の体を壁にぶつけて返事をする。
すると、またドンッと音が聞こえて来た。
「返事をしてくれてる!」
そう感じ、壁に耳を押し当てた。
誰の声も聞こえてこない。
けれど、ドンドンという物音だけは聞こえて来る。
「誰!? 誰がいるの!?」
そう叫ぶが、返事はない。
向こうにもあたしの声は聞こえていないようだ。
だけど壁を叩けば返事が来る。
それだけで十分満たされたのだった。
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