第13話
あたしは奥にあるドアを見つめた。
あのドアの向こうになにがあるのか調べ方がいい。
気力を振りしぼり、体を移動させていく。
その時だった。
さっきまで背もたれにしていた壁から、ドンッという物音が聞こえてきて動きを止めた。
壁は入って左手側だった。
「誰かいるの……?」
思わず、そう声をかけていた。
どれだけ大声を上げたって何も聞こえてこなかったのだから、誰かがいる期待は薄い。
もしかしたら犯人が隣の部屋へ移動しただけかもしれない。
それでも、反応を返さずにはいられなかった。
あたしは横になり、両足を上げて壁にぶつけた。
ドンッと鈍い音が響く。
声が届かなくても壁を伝った音なら相手に聞こえているのかもしれない。
相手からの反応はないけれど、あたしはもう1度同じようにして音を立てた。
すると……ドンッと、確かに壁の向こうから聞こえて来たのだ。
あたしはハッとして上半身を起こした。
やっぱり誰かがいるんだ!
犯人だとすればわざわざ壁を叩いて返事なんてしない。
きっと、犯人以外の誰かがいるんだ!
期待がグングン胸の中に膨らんでいく。
「誰かいるの!?」
あたしは壁へ向けてそう叫んだ。
しかし、返事は聞こえてこない。
代わりに肩から壁にぶつかってみた。
すると向こうもドンッと返事をくれる。
あたしは1人じゃない!
1人じゃないんだ!
そう思うと喜びが胸の中に膨らんできた。
何度も何度も、繰り返し壁を叩く。
相手は返事をする。
あなたは誰?
どうしてここにいるの?
あたしを助けて!
もしかして、被害者なの?
色々な考えた頭の中を駆け巡る。
それでも、戻ってくる音があるというだけで、あたしの心は随分と救われたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます