第15話
~スミレ~
何度か音のやり取りをして気が付いた。
やっぱり相手は犯人じゃない。
犯人ならこんなまわりくどいことはしない。
話がしたいなら、直接入ってくればいいだけのことだ。
しかし、この音を鳴らしている本人がこっちの部屋に入ってくる気配もない。
ということは、相手はあたしと同じように拘束された状態かもしれないのだ。
あたしと同じ被害者がもう1人いるかもしれないということ。
あたしは覆面男の体型を思い出していた。
最初の男と次の男は明かに違った。
3度目に入って来た男は別人かどうかわからなかった。
でも、最低でも犯人は2人いるということだ。
そして誘拐された人数も2人。
「同時に誘拐されてきたのかも……」
その可能性は十分にあった。
なにかの目的があって、同時に誘拐してきたのかもしれない。
もう1つ。
犯人の1人は小柄だった。
力があるようにも見えなかった。
大人や男を誘拐するのは大変そうだから、隣の部屋に監禁されている子も、あたしと同じ女子高生かもしれない。
高校生ばかりを集めて怪しい商売でも始めるつもりだろうか。
そう考えて、あたしは壁を蹴った。
相手からも返事がある。
会話ができないのが悔しいけれど、あたしと隣の誰かは時々音を立てて互いの生存を確認し合ったのだった。
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