第7話

☆☆☆


部屋に帰れば彼氏が待っている。



学校ではお姫様。



こんな素敵な日常があたしは大好きだった。



不満なんてほとんどない。



そうだったのに……。



気がつけば見知らぬ部屋の中にいた。



6畳ほどの部屋に裸電球が1つ。



白くて小さなテーブルが1つ。



他にはなにもない。



手足も拘束されているし、逃げる事はできなさそうだ。



「最低」



あたしは小さな声で呟いた。



どうせあたしのファンがやったことなんだろう。



学校内でも時々いる。



無理やりにでもあたしを手に入れたいっていう、野蛮な奴らが。



そんな奴らの餌食にならないよう、いつも数人で行動するようにしていた。



それが今日に限って1人で帰ってしまったのだ。



たまには冬夜のために料理をしてあげようと考えて、買い物に寄ったのがまずかったらしい。



けれど、こんな場所に監禁までされるとは思っていなかった。



相手は相当あたしに入れ込んでいるようだ。



と、その時だった。



テーブルの向こう側にあるドアが開いたかと思うと、覆面を被った男が姿を見せたのだ。



驚いて一瞬声がでなかった。



「あんた、あたしのファンなんでしょ?」



テーブルの上にパンと牛乳を置くその男へ向けて、なんとかそう声をかけた。



男はなにも言わない。



「あたしを自由にしたいんでしょ? だって、こんなに可愛い女子高生なかなかいないもんねぇ?」



男にグッと顔を寄せてそう言った。



この覆面男を手玉に取ってしまえばこっちのものだ。



「ねぇ? キスしてあげよっか? 強引にじゃなくてあたしから」



そう言うと覆面男はあたしを見て少しだけ目を見開いた。



あたしはニヤリと笑う。



食いついた。



そう思った次の瞬間だった。



覆面男の右手があたしの首を掴んでいた。



呼吸が止まり目を見開くあたし。



覆面男は布の上からあたしに無理やりキスをすると、そのまま部屋を出て行ったのだった。

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