第4話

 初めての絶頂から地上に戻って来た頃には、彼女は居なくなっていた。どこへ行ったのだろう。そう思っていると、ストローを挿したペットボトルを持って戻ってきた。


「ん。彩、いっぱいいてたから喉乾いてるでしょ」


「あ、ありがとう……」


「どういたしまして。身体痛いところない?大丈夫?」


「う、うん……平気……」


「そっか。良かった」


「……」


 優しい。優しすぎる。美波が優しいのは今に始まったことではないが、こうも甘やかされると少し戸惑ってしまう。


「……で、彩。どうする?あたしのこと、恋人にしてくれる?」


「う……」


 初めて気持ち良いと思えた。美波の愛は痛いほど伝わった。断る理由なんて無いけれど、改めて言葉にするのは照れ臭くて、黙ってしまう。


「彩。どうするの?」


 ニヤニヤしながら問いかけてくる彼女。もう答えは決まってるよね?と言わんばかり顔をしているが、どうしても私の口から答えを聞きたいのだろう。


「……よろしくお願いします」


 私がそう答えると、彼女は泣きながら「こちらこそよろしく」と笑った。


 ちなみに元カレは、あの日見た女性以外にも複数の女性と付き合っていたらしく、全員にバレて捨てられたと風の噂で聞いた。あの日彼の浮気を知らなかったらきっと、美波とは付き合っていなかった。今ではある意味、浮気相手だった女性には感謝している。私を物としか見ていない男の元から離れられて、新しく私を大切にしてくれる素敵な恋人が出来たのだから。

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あたしにしときなよ 三郎 @sabu_saburou

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