第133話 「プール清掃」
(蒼汰)
梅雨が明けて、学校ではそろそろプールの準備が始まる。
今年は美咲ちゃんのスク水姿を見られるかと思うと胸が熱い。
例年だと、水泳の授業が始まる前に水泳部員が総出でプール清掃を行うのだが、今年は部員数が少ないらしくて、生徒会にヘルプが来た。
俺は美咲ちゃんと一緒なら、どんな仕事でも大丈夫だ。
生徒会役員だけでは人数不足なので、いつもの連中に声を掛けて手伝いをお願いした。
何だかんだと文句を言いつつも、皆で集まるなら来てくれる連中だ。ありがたい。
夏空、ギラつく太陽、遠くの空に広がる入道雲、男子は制服のズボンの
勝手にそういう妄想をしていたが、上は体操着で下はジャージでお掃除だった。
誰だ! あんな嘘っぱちのイメージを植え付けた奴は!
先ずは緑の池と化している水を抜く。
水が引いて来ると、いつの間にか池に湧いた魚が跳ねた。
「魚は五十cm以上の水深があると自然発生するらしいよ」
「えー、種が飛んできて湧くんでしょう?」
「近くの川とかから歩いて来るらしいよ」
みんな水深が浅くなって来た緑の池を遠巻きに見ながら、適当な事を言っていた。
「また今年も誰かが放流してる!」
振り向くと、
うんうん、今日もお胸が素晴らしい。
「去年とか魚が五十匹くらい居たらしいわよ」
先生は持って来た柄の長い網を二本差し出した。
「はい。まずは魚すくいから。水が抜けきる前に急いで!」
俺たちは魚を発見する係と、捕まえる係に分かれて、プールの周りを駆け回った。
魚を見付けて結衣が大騒ぎするし、捕まえ損なったらパンチされるしで散々だった。
でも、美咲ちゃんが見つけた魚を捕まえて、喜んでくれたから満足だ。
結果、今年の漁獲量はフナ十匹と亀二匹だった。
捕まえた魚は、水を張ったバケツに入れて、ごっつい体育教官が何処かに持って行ってしまった。
まさか食べるのか……。
水が抜けきったら、いよいよプール掃除本番。
素足は危険だという事で、靴型の水
先ずは大きなゴミを拾ってからということで、底に落ちている色々なゴミを拾う。
高校のプールに何故こんなにゴミが落ちているのか不思議だが、落ちている物は仕方が無いので、皆で拾った。
俺がジュースの缶を拾っていたら、ニヤニヤしている
浮輪の残骸かと思っていたら、空気を入れて膨らます人形だった。
「なぜ高校のプールにこんな物が……」
「お前と帰りたいと言ってるぞ。蒼汰持って帰れ」
「いや、裏に
笑いを噛み殺しながら皆で囲んで話をしていると、伊達君が寄って来て人形を不思議そうに見ていた。
「こんな人型の浮輪が有るの?」
とか言っていたので、前園さんと海に行く時に、買って行くと良いとアドバイスしておいた。
いやいや、その時は俺と美咲ちゃんも一緒だろうから、やっぱり駄目だ!
ゴミを拾い上げて、ホースで溜まった緑の藻の様な物を水圧で押し流して、いよいよデッキブラシの出番だ。
思いのほか重労働だったけれど、プールが段々と綺麗になって行くのは気持ち良かった。
途中で先生がジュースを買ってきてくれて、プールサイドに並んで休憩。
まだ汚れが残ってはいるが、水を抜いた直後に比べたら、格段に綺麗になっていた。
休憩を終えて、残った箇所を綺麗にして、後はもう一度ホースで汚れを流したら終了! のはずだが、水を
清掃が終わり、直ぐに水を貯めて女子水泳部員の水着姿が見られるかと思ったら、今から貯めても明日の朝になると言われた。
言われてみればその通りだ……。チッ!
プール清掃が終わり、航や
俺たちは生徒会室に戻り、簡単な活動報告書を書いて下校。
帰りは久しぶりに美咲ちゃんと一緒だったから、カフェに寄って話をした。
美咲ちゃんから進学について聞かれたから、推薦試験を受ける予定だと伝えた。
逆に美咲ちゃんは、まだ色々悩んでいると言っていた。
決めていないなら、俺と一緒の大学にしようと言ったら、笑顔で「良いかも」って言ってくれた。
決定だ! 美咲ちゃん! 俺たちはずっと一緒だ!
他にもいろいろと話しながら、この前予報が外れて大雨が降った日に、学校帰りにずぶ濡れになった話をしたら、美咲ちゃんが急に赤くなってモジモジし始めた。
理由は分からなかったけれど、モジモジしながら俺の指で手遊びを始めた仕草が可愛いくて堪らない。
正直、あの日一緒に帰って美咲ちゃんのずぶ濡れ姿が見たかったと思った。
シャツが透けて下着とか見えたかも知れないのに……。
でも、そしたら時間的に来栖さんの綺麗なお胸は見られなかったのか……。
うーむ。
外に出ると、遠くの空に入道雲が浮かんでいた。
そう言えば蝉の鳴き声も聞こえるようになって来た。
もう少ししたら、暑い夏が来る。
今年は受験生だから、頑張らないといけないけれど、美咲ちゃんと一緒に過ごせる時間が沢山あると嬉しいな……。
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