第50話 「蒼汰くん、可愛いね」
(蒼汰)
文化祭が始まり、俺は早野先輩と一緒に校門でビラ配りをしている。
最初の頃は静かだったけれど、早野先輩目当ての女子が集まり始め、他の先輩や生徒達も見学に来たので、いつの間にか校門前は凄い人だかりになっていた。
文化祭の午前中の出し物で一番盛り上がったのは、もしかしたら校門前かもしれない……。
俺は早野先輩に紹介される度に、知り合いに抱き付かれるという状態だった。
もちろん望月先輩からも熱い
三大先輩コンプリート……。
そう思っていたら、もう一人俺に抱きついた先輩がいた。
「蒼汰にも手伝って貰ってるのよ。ほら、あっちが蒼汰」
早野先輩に促されて、俺の方に来たのは
今日も綺麗だ。
桐葉先輩は俺の顔をしげしげと見たかと思ったら、他の先輩同様抱き付いて来た。
いや抱き付くというより、抱きしめる様な感じで
俺はまさか抱きつかれると思っていなくて、硬直したままドキドキしていた。
桐葉先輩が少し強めに抱きしめたかと思ったら、小声で話し掛けて来た。
「……蒼汰君。君は本当にいつも可愛いな……」
離れ際に頬に軽くキスして離れて行った。
余りの出来事に目を丸くしていると、
ヤバい。
いや、そうじゃなくて、今のはいったいどういう意味だ?
女装が可愛かったのか?
え? 桐葉先輩って、そっちの方なの? いや、どっちの方なの?
て言うか、物心ついてから異性にキスされたの初めてなんですけど……。
俺が桐葉先輩の事で大混乱に陥っていると、結衣達がやって来た。
噂を聞きつけて来たらしい。
航が速攻で抱きついて来た。
航……メイド服が嬉しいのは分かるが、尻触るの止めろ……中身は俺だ。
「蒼汰。めっちゃ可愛いじゃん! 一緒に写真撮ろうよ!」
今度は結衣が抱き付いて来た。
今日は知り合いが全員俺に抱きつく日なのか?
そう言えば、女子と一緒だった龍之介ですら抱きついて来たな……。
「蒼汰君。可愛いね」
振り向くと美咲ちゃんが居た。
よし来た!
今日は知り合い全員ハグの日だ。きっと、そういう日なのだ!
俺は美咲ちゃんをしっかりと受け止める準備をした。
結果、唯一の例外が美咲ちゃんだった……。
でも、美咲ちゃんと一緒に写真を撮る時に、お胸がしっかりと当たっていたから、これ以上
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しばらくしてビラ配りが終わり、俺は解放された。
でも、三時頃にもう一度クラスで手伝って欲しいとお願いされたので、このままの格好で過ごすことになった。
クラスの模擬店に戻ると、俺のメイド服姿が好評で、しばらく呼び込みをさせられた。
その代わり焼きそばを四人分無料で貰い、航と女子三人という体で焼きそばを一緒に食べた。
『焼きそば奉行』の作った焼きそばは、とても美味かった。「任せろ」というだけのことはある。
その後、四人で文化祭を見て回った。
文化部の展示を見たり、チョコバナナを食べたり、ゲームをしたりして楽しんだ。
お待ちかねの『お化け屋敷』は、何故か結衣と美咲ちゃん、俺と航がペアになって入る事になった。何でそうなる……。
途中、美咲ちゃんと写真を撮らせてくれというウザオ達が何人か寄って来たが、有無を言わさず俺が真ん中に入り記念撮影。
美咲ちゃんもツーショットの写真は嫌みたいで、常に俺と一緒に写る様にしていた。
馬鹿どもめ、俺の美咲ちゃんだ。
バンド演奏を見たところで三時近くになったので、俺は早野先輩のクラスに戻る事にした。
三人は模擬店に戻って手伝うらしい。
もっと一緒に居たいと思ったけれど、今日は美咲ちゃんの笑顔を沢山見られたから満足!
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